大倉社長コラム〈78〉WALK TO THE DREAM 福島ダービー

 

 ◆いわきスポーツクラブ・大倉智社長

 ◆県民の関心、より高める

 福島ユナイテッドFCとの「福島ダービー」2連戦は、1勝1敗の痛み分けとなった。8日の天皇杯県代表決定戦決勝は内容が悪くなかっただけに悔やまれる敗戦だったが、負けは負け。この結果を受け入れるしかない。課題に向き合って、また練習を積むだけだ。

 4日の入場者は4501人を数えた。福島県に、これだけの観客が集まるスポーツ興業はないと言って良いだろう。県内でプロスポーツの存在感が高まった一日になったと思う。

 一方で冷静に考えたいとも思う。4日はどんな人たちが、どんな理由で見に来てくれたのだろうか。

 ダービー前の福島のホーム戦平均入場者数は約1000人だった。前売りチケットの売れ行きなどから、いわきサポーターは少なくとも800人。では、残りの約2700人は頻繁に観戦しない人や初観戦の人ということになる。

 試合はリーグ戦では初のダービーで、大型連休期間中。互いに上位で迎え、天気にも恵まれた。多くの人にとって来やすい条件がそろっていたと思う。問題は2700人のうちの何人が今回の好条件でなくても、また見たいと思ってくれたのか否かだ。

 多くの人が興味、関心を持ってくれていることが分かったのは大きな収穫だった。今後はこれを継続、成長できるかどうかが大切になる。プレーの質だけでなく運営や販促など、高めなければならないことはまだまだ多いと感じている。

 同じJ3を見渡しても、第9節終了現在で松本山雅が約8500人、岐阜が約4500人、鹿児島が約4300人を平均で動員している。いわきも福島も1800人台で遠く及ばない。積み重ねてきた歴史の違いだろう。福島県にサッカーを根付かせる取り組みは、まだ始まったばかりだ。

 おおくら・さとし 川崎市出身。早大商学部卒。現役時はJリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでFWで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレGM、社長などを歴任し、2015年12月から現職。53歳。