大倉社長コラム〈80〉WALK TO THE DREAM スタジアム観戦

 

 ◆いわきスポーツクラブ・大倉智社長

 ◆感動体験を提供したい

 スポーツには「する」「見る」「支える」といった側面があると言われている。「する」には、できなかったことができるようになる成功体験を得ることで仲間との絆が生まれたり、目標に向かって努力することを通じて日常生活では得られない経験をしたりできる。「見る」においても、観戦する人が試合を通し何か特別な体験や感情を味わうことがあると思う。

 われわれは試合を生で観戦するさまざまな人々に、選手が一生懸命にプレーする姿やプロアスリートの人並み外れたスピード、パワー、選手の息づかいや体と体がぶつかる音など、普段の生活とは違った非日常空間を味わってもらいたい。そして選手が倒れても再び立ち上がる姿から感動や共感、憧れが生まれてくると思う。そのような感動体験を提供できればベストだ。

 スタジアム観戦の感想は人それぞれ違うだろうが、周囲と一体となり選手を応援する体験からは非日常的な空間を感じるはずだ。試合を見た人が選手から刺激を受け「また見に行きたい」と思うようなサイクルが生まれると、する側と見る側で相乗効果が生まれる。

 スポーツ観戦は、心身が健康で満足した生活を送ることができる「ウェルビーイング」につながる。試合を見た人が選手の頑張る姿を自分自身に重ね合わせ、「自分も頑張ろう」と思えることで内面から健康になる。試合だけでなく、開始前にはスタジアムのイベントやグルメなどを楽しみ、日頃のストレスを発散できるような場所にしたい。

 さらに、スタジアムを訪れることで出会いが生まれる。いわきFCの試合がきっかけで地元を離れた知人と再会したり、サポーター同士で結婚した人もいる。サポーター同士が触れ合うことで、何かが変わる魅力がスタジアムにはある。

 おおくら・さとし 川崎市出身。早大商学部卒。現役時はJリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでFWで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレGM、社長などを歴任し、2015年12月から現職。53歳。