田村SDコラム〈12〉WALK TO THE DREAM S級コーチ講習

 

 ◆いわきFC・田村雄三SD

 ◆監督業を見直す機会に

 今回、大倉智社長や村主博正監督の後押しがあって、日本サッカー協会S級コーチ養成講習を受けている。クラブの仕事をこなしながらの受講だが、世界の最新事情や他のクラブの状況に触れるとともに、自分が指導者としてどうだったかを見つめ直す良い機会となっている。

 昨年までは「チームのカルチャーを作る」と突っ走ってきた感があった。昇格を果たした時「資格がないからJリーグで監督ができない」というより「とりあえずここまで来て一段落だ」との思いが強かった。そこからもう一度、気持ちを高める意味では受講できたことは良かった。

 S級ライセンス取得の目的は本来、プロの監督になるためというのが正しいだろう。プロの指導者をやりたい気持ちはある一方で、監督と強化担当の両方を経験することは、どちらの立場でも仕事の幅が広がると考えており、(自分自身について)模索している状況だ。

 監督は1人で判断しなければならず、その結果で多くの人に影響を及ぼすという責任がある。研修を通して、感覚や経験だけでなく、(責任を果たすために)知識や自分の考えを浸透させる技術が必要だと分かった。

 国内各クラブのスタッフらから直接深い話を聞くことで、メディアを通した情報とは違った部分を知った。そして、他のクラブと比べることで「自分たちはしっかりしている」と思った。身体強化から食事、睡眠までを理論ではなく実践していることが改めてすごいことだと感じた。

 受講者19人のうち監督経験者は3人だが、年齢的には下から3番目だ。もっと若い人が受講できれば良いと思うが、タイミングやクラブの方針といった事情で受講できる人は限られるのだろう。その意味で恵まれた環境に感謝している。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年から選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部を経て15年にいわきFC強化部入り、17~21年に監督を務めた。39歳。