【ふくしま応援人】キレない縁、寄り添い

 
「観光も学びもできる福島を訪れてほしい」と語る竹山さん

 お笑い芸人 カンニング竹山さん

 仕事のスケジュールが空くと、旅行をしたい気分の時には決まって福島県に足を運ぶ。予定は特に決めず自由気ままに観光し、地元の食や人との出会いを楽しむ。お笑い芸人のカンニング竹山さん(52)は「カメラのないロケ」と称する"余暇"を過ごしながら、旅先で見つけた福島の魅力を交流サイト(SNS)で発信し続けている。

 「長い闘いになる」

 もともと本県には縁もゆかりもなかった。記憶の限りでは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から2カ月が過ぎたころ、当時出演していたラジオのニュース番組の取材で初めて浜通りを訪れた。線量計を手に沿岸部近くに行くと、漁船はがれきに埋もれ、田んぼは池と見間違うほど冠水し、行方不明者の懸命な捜索が続いていた。「これは2~3年で(復興が)終わる話じゃねえな。きっと長い闘いになるな」。原発事故の深刻な影響も見聞きし、率直にそう思った。

 第1原発の電力は「そもそも東京に住む俺たちが使っていた」という事実から目を背けず、復興に寄り添い続けると決めた。自分に何ができるのかを考えた結果、数多くのロケ番組に出演した経験を生かし、福島県内を観光して道中の魅力やさまざまな出来事をツイッターで発信する"竹山ぶらり旅"を企画した。「そもそも旅が好きだから長く続けられるし、お金を使えば少なからず役に立てる。そして、一人でも『福島に行ってみよう』と思ってくれればいい」

 故郷に帰る感覚

 浜通りの国道6号にレンタカーを走らせ、地元の名店のラーメンに舌鼓を打ち、夜は居酒屋で酒杯を重ね、ツイッターでつぶやく。当初は地元のスーパーで購入した野菜の写真を投稿すると、批判の声が次々と寄せられ瞬く間に「炎上」したが、竹山さんは「今や(批判は)ほとんどない。(県産品への)意識はだいぶ変わったと思う」とみる。これまでプライベートで本県を訪れた回数は30回以上に上る。竹山さんにとって「福島の『ふ』の字も知らなかった」という本県が「故郷の福岡に帰るような感覚の場所」になった。

 竹山さんは、後輩のお笑い芸人を旅行に誘うと海の近くに連れて行くことがある。「見てみな。ここに町があったんだよ」。今は見渡す限りに広がる空き地のかつての姿を想像してもらい、震災と原発事故の恐ろしさや教訓を伝えたいからだ。

 大人も来てほしい

 特に訪れる頻度が高いという浜通りについて「観光もできるし、学べる場所でもある。学生はもちろん大人にもどんどん来てほしい」と竹山さん。いつかは自身が同行するバスツアーを企画したいと考えている。

 第1原発で発生する処理水の海洋放出や中間貯蔵施設で保管している土の最終処分の行方など、復興の重要課題にも向き合い続けてきた。「昼間は震災や原発事故について学び、夜は一緒にうまい飯を食ったり酒を飲んだりできれば面白い」。本県を応援するためのアイデアを膨らませている。

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 かんにんぐ・たけやま 福岡市出身。バラエティー番組や情報番組などで活躍。2019年に本県の観光地などを紹介する著書「福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねえかよ!」を出版。「福島ファン」を公言し、復興の課題の解決に向けても取り組んでいる。