【浜通り13物語】第10部・「変わらぬ仲間」/「浜の未来」笑顔に変える

 
浜通りサーティーンを創設した(左から)吉田知成氏、吉田学氏、宮本氏、遠藤氏。高校時代を共に過ごした双葉町で笑顔を見せる

 地域の課題「つながり」で越えて

 浜通り広域の連携組織「HAMADOORI13(浜通りサーティーン)」は、双葉高で同級生だった4人の若手事業者の集まりが原点となった。東日本大震災後に設計・建設の「タイズスタイル」を起業した大熊町出身の吉田学(47)の構想が始まりとなり、富岡町出身で「宮建工業」の宮本政範(47)、双葉町出身で「伊達屋」の吉田知成(47)、広野町出身で測量会社「イーツーコンサルタント」の遠藤剛(47)が共に実現に向けて走り出した。

 彼らが集い始めたのは東京電力福島第1原発事故から5年後の2016(平成28)年だった。当時は、避難指示解除の有無が浜通り各地の復興を左右していた。今年、宮本は「時間差で避難指示が解除され、今はその後の地域づくりなんかに差が出ているよな」と指摘する。学が「地域ごとのコミュニティー再生の差をつながりで埋めていくことが俺たちサーティーンの役割だと思うし、その準備はできているだろ」と答える。

 知成も「そうだ。みんなでやっていかないとな」と応じるが、それは言葉だけではない。彼らは現在、双葉町に大規模な洗車場の建設を進めている。知成の伊達屋が発注し、学が工事の元請けとなる。遠藤が測量設計し、宮本が土木工事を担う。整備にはほかのサーティーンのメンバーも加わって7月に稼働する予定だ。ガソリンスタンドが消えた双葉町に伊達屋が帰還し、失われた地域の機能を回復させたように。

 サーティーンは団体としても動き出している。JFL昇格の初戦を冠スポンサーで応援したサッカーいわきFCは、「浜の光」となる気持ちを堅持して今季からJ2で戦っている。2月の開幕戦も、再びサーティーンが冠試合として支援した。大手広域マーケティング会社と連携し、浜通りの交流人口拡大を図る企画も動き出した。若手起業家を支援するフェニックスプロジェクトでは、3期生の募集を行っている。次の一手をどうするか。

 遠藤が「俺たちは近からず遠からずの親戚みたいなもんじゃないか。肩肘張らずにやっていけば大丈夫だろ」と訴えた。「おお、何か良いこと言ったな」とほかの3人が混ぜっ返した。4人が醸し出す「何でも言い合える雰囲気」が団体の中核にあり、各地の有志がつながって現在の会員は200人を超えた。

 人の戻ってきた地域があれば、これから生活の基盤を築き直す地域がある。浜通りの被災地は「課題の先進地」ともいわれている。だが、変わってしまった浜通りの景色の中に、変わらない仲間たちがいる。一歩一歩進んできた苦しさと喜びを胸に彼らは笑っている。そして、これからも。(文中敬称略)

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 連載「浜通り13物語」は今回で終わります。菅野篤司が担当しました。