【浜通り13物語】第4部・俺たちはできる/互いに認め関係を築く

 
現在の双葉高の状況。吉田学氏らはかつてこの学びやで濃厚な青春の日々を送っていた

 双葉高で部活に汗

 大熊町出身の吉田学、双葉町出身の吉田知成、広野町出身の遠藤剛、富岡町出身の宮本政範の4人は、それぞれ中学時代に野球で知られた存在として、双葉高に入学した。学は野球推薦の話もあったが、一般入試で入学した。「高校ではバスケ部に入ろう」と考えていたが、なぜか軟式野球部に入部届が出されており、そのまま入部した。

 知成は当時、手をけがしていたため、どの部活にも入部しなかった。自由に過ごしたいと考えていた遠藤も同様で、2人は知成の実家「伊達屋」がJR双葉駅前で営んでいたファストフード店「ペンギン」などでたむろする日々だった。一方、宮本は中学校にサッカー部がなかったため野球をしていた経緯があり、高校では念願のサッカー部に入部した。

 軟式野球部の3年生は夏の大会で引退した。1、2年生の新チームがスタートするが、1年生で熱心に部活をしていたのはほぼ学だけ。「このままでは将来、野球ができなくなってしまう」と考えた学は、独自に部員集めを敢行する。中学校で野球を経験していて、部活に入っていないのは誰か。知成と遠藤が視野に入った。

 「もうけがは治ったか。先輩もいなくなったし、練習見に来ないか」と知成を誘った。もとより野球が嫌いではない知成は「一緒に野球やろう」という学の呼びかけに応え、1年生の秋に入部した。遠藤は自由を楽しみたいと返事を先延ばしにしていたが、時に昇降口で待ち構える学の熱心な誘いに折れ、2年生の春に入部する。学の勧誘はさらに進み、人数がそろった。

 やがて学は、その行動力からチームのキャプテンに選ばれる。学はさらに「俺たちは強くなろう」と、野球経験者の教師に顧問就任を直談判する。知成と遠藤は「練習厳しくなるだろうが。何してくれてんだよ」と思ったが、学の情熱は止まらなかった。案の定、練習は厳しくなったが、もともと野球センスのある彼らは適応し、チームも着実に強くなっていった。

 軟式野球部とサッカー部の練習場所は、校庭で隣同士だった。3人と宮本は互いに認め合いながら「ボールが飛んできた」「球が入ってきた」と日常的に言い合うような間柄だった。4人はまさに、スポーツ漫画の題材になるような濃厚な高校時代を過ごしていた。

 震災後の2016年ごろから再び緊密に会うようになった4人は、それぞれが会社を経営する一国一城の主になっていたが、復興について何でも話し合える間柄を保っていた。「各首長に若手に何をしてほしいか聞いて回ってみるか」など、彼らはほかの同級生らを巻き込みながら、復興への思いをたゆまず語り続けた。(文中敬称略)