【浜通り13物語】第7部・「結実」/浜通り復興、ワンチーム

 
いわき市のワンダーファームで開かれた浜通りサーティーンの決起大会=2020年9月

 決起大会で広域連携誓う

 2020年9月22日、浜通りの広域連携組織「HAMADOORI13(浜通りサーティーン)」の決起大会が開かれた。会場は、いわき市のトマト農家である元木寛が、東京電力福島第1原発事故後にオープンした同市四倉にある体験型農園「ワンダーファーム」だった。

 浜通りサーティーンは、東日本大震災と原発事故で深刻な打撃を受けた被災地で、家業や地域の再生に取り組んできた若手有志数人の「復興で俺たちにできることがあるはずだ」という思いから始まった。20年2月の最初の会合に集まったのは元木を含め10人程度だった。同じような考えを持つ浜通り各地の仲間を誘い合った結果、決起大会には数十人が駆け付けた。

 元木の元に大会の資料が残っている。震災後にいわき市で設計・建設のタイズスタイルを起業した吉田学が、団体の代表としてあいさつした。初期の設立メンバーの多くは、彼の双葉高の同級生である。次に吉田らに先んじて古里の復興に汗を流していた富岡町出身の藤田大が、団体の目指す理念などについて説明した。元木は「決起大会で初めてサーティーンの会合に来た人は『これから何が起きるのだろう』と話に聞き入っていた」と、当時の空気感を説明する。

 団体の理念は、浜通りの青年が地域連携を実現し、持続的な発展につなげること。活動の柱には、国や行政と結び付いた地元経済の活性化などの3本を据えた。資料には「震災10年を前にしての問題意識 このままでいいのだろうか?」などの言葉がつづられており、震災復興に向けた彼らの熱量が感じ取れる。

 決起大会には、元木のワンダーファーム設立を支援したいわき市の伝統農家、白石長利も参加していた。吉田らサーティーンの中核メンバーを「自分のためではなく、周りの人に利益が出ることを生み出そうとする頼りになる人たち。震災がなければ会うことはなかった」と語る。震災前には存在していなかった異業種の若手らによるチームの結成。白石は「大変な思いをしたからこそ、大きく変わることができた。震災とは、それぐらいのことだったと思う」とも指摘する。

 代表の吉田は「決起大会で初めて会った人でも、共通の知人を通じて名刺交換して仲良くなっていた。浜通りの各地域でそれぞれ課題は異なる。その解決を互いに応援し合う固まりができたと感じた」と振り返る。

 決起大会後、彼らは活動を本格化する。地震、津波、原発事故、風評被害。複合災害の中で古里再生を諦めなかった青年らの思いは、2人の農家がゼロから開拓した農園で、ひとまずの結実を見たのである。(文中敬称略)=おわり

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 この連載は菅野篤司が担当しました。