【浜通り13物語】第9部・「継承」/情熱、次世代につなげる

 
プロジェクト2期生の認定式で、サーティーンメンバーと1期生らが新たな仲間を笑顔で迎えた=2022年10月、大熊町

 人対人の支援事業

 2022年10月24日、浜通りの広域連携団体「HAMADOORI13(浜通りサーティーン)」が東日本大震災復興支援財団と連携して若手の起業を支援するフェニックスプロジェクトの、第2期の認定式が大熊町で行われた。新たに4人の地域再生につながる取り組みが支援対象になることが発表された。

 式では、サーティーン代表の吉田学が「将来の成長の確度の高さなどから決めましたが、一番重要だと感じたのは皆さんの熱量です」と審査のポイントについて語った。続いて「採択者の皆さん、後ろを見てください。第1期の採択者がいます。その後ろにはサーティーンのメンバーが来ています」と呼びかけた。

 言葉の通りプロジェクトの1期生に加え、サーティーン設立に関わった鹿股亘、遠藤剛、元木寛、森川永一らが2期生を迎えた。認定書の交付や写真撮影に移ると、2期生が緊張気味なことを感じ取ったのだろう。副代表の藤田大が「緊張するね」と声をかけ、場を和ませた。藤田は1期生の悩みに対し、経営者の先輩として電話などで相談に乗る役割を果たしていた。

 式が進み、司会をしていた事務局の佐藤亜紀が「それでは1期生を代表してエールを送っていただきます」と述べ、川内村で古民家カフェの開業を目指す1期生の志賀風夏を指名した。志賀は「プロジェクトを1年経験し、人対人の血の通った支援事業だと思いました。私が悩んでいた時、こちらから言わなくても『どうしたの』と相談に乗ってくれました」と自らの体験を語った。その上で「頼りない先輩かと思いますが、2期生の皆さんともつながって、浜通りを盛り上げていければいいと思います」と朗らかに語った。

 1期生は着実に歩みを進めてきた。志賀の古民家カフェ「秋風舎」は今月中旬のオープン予定だ。英語体験プログラムを企画する野地雄太はこれまでに複数回事業を実施した。飯舘村で地域再生の拠点となる「図図倉庫(ズットソーコ)」を運営する矢野淳と松本奈々は複数のプロジェクトを動かしている。南相馬市で酒造りに取り組む佐藤太亮は浪江町での新たな醸造所のオープンを5月に計画している。

 吉田は、プロジェクト名について「不死鳥のイメージからジャストアイデアでした」と明かす。支援の中身はかつての自分たちがしてほしかった対応を取り入れた。被災地で先に挑戦を続ける者として「次世代に継承していくことを大事に考えました」と振り返る。震災から間もなく12年。サーティーンに集ったメンバーもまた、新たな道を歩もうとしている。(文中敬称略)=おわり

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 この連載は菅野篤司が担当しました。