進まぬ放射線影響への理解 県民の健康など、都民・風評アンケート

 
放射線による健康影響などについての東京都民1000人の意識(三菱総合研究所の調査より)

 東京電力福島第1原発事故に伴う風評問題などをテーマに、三菱総合研究所(東京)が東京都民千人を対象に実施したアンケートで、放射線の影響で福島県民に今後、がんなどの健康影響が生じたり、次世代に遺伝的影響が生じると誤って理解している都民が全体の4割に上った。

 2年前に実施した同様の調査と比べると割合は減少したが、原発事故から8年8カ月経過した現在でも、放射線影響への理解が進んでいない実態が浮き彫りになった。

 東京五輪が来年開催されることを踏まえ、三菱総研は「日本国内で理解が進まない状況は、海外での理解の妨げになる恐れもある」と指摘。その上で「放射線の健康影響に関する理解を進める政策などが引き続き、積極的、着実に進められる必要がある」と提言している。

 アンケートは6月21~23日に20~69歳の都民男女千人にインターネットを通じて行った。2017(平成29)年に続き2度目の調査。

 がんなどの健康影響が県民に生じるかという設問で、四つの選択肢のうち「可能性は高い」側の二つを選んだ人は46.5%(前回調査比7ポイント減)で、次世代への影響についても41.4%(同8.4ポイント減)を占めた。

 原発事故に伴う放射線による健康影響を巡っては、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR(アンスケア))が今後健康障害が生じたり次世代の人に健康影響が生じることは「予測されない」と報告している。

 三菱総研は、都民の理解は2年前と比べ大きな改善は見られないとした上で、「(一定割合の)都民が放射線の次世代への健康影響を懸念している。このような懸念が続くと、国内の一部に差別や偏見の意識が根付いてしまう恐れがある」と問題提起している。