【震災9年・ふくしまを創る】おいしい福島を知った

◆福島大食農学類1年 牛田ジョシュア昭彦さん(20)
「福島県内で自分の店を持ちたい。県産の野菜を使ったおいしい料理を入り口に、福島に興味を持ってもらえれば」。福島大食農学類1年の牛田ジョシュア昭彦さん(20)=福島市=は、そんな将来を思い描く。
畑仕事が好きな祖母の影響で、農業に興味を持った。「トマトやナスなど、自分で畑から取った野菜がおいしかった」。幼少期の日常をきっかけに、いずれは農業と食をつなぐような仕事をしたいと考えるようになった。
愛知県豊明市出身で、コロンビア人の父と日本人の母の間に生まれた。本県には縁もゆかりもなかった。牛田さんと本県を結び付けたのが、食農学類。高校3年時には、愛知県内の大学を中心に受験したが、浪人。予備校で福島大に新たな学類ができることを知り、受験を決意した。
ただ来県前は、東京電力福島第1原発事故による放射能への不安は拭えなかった。それでも、自分なりに事故後の検査体制などを調べたことで「福島県の食の安全の意識は、他県より高い」と実感。今では直売所で旬の野菜や果物を買い、料理をするのが日課になった。「身をもって福島は大丈夫だと分かった。桃は特においしい」と本県の豊かな食を堪能している。
◆「農家の復興盛り上げたい」
昨秋、食農学類の新入生有志で「農林サークル」を設立。副代表として、農家との交流や農作業の手伝いのほか、大学の畑で野菜を育てるなど、授業以外の時間も農業に親しむ。「新しい農業をもっと知ってもらい、若い人が農業の世界に入ってきてくれるよう、農業のイメージを変えたい」
将来、自分の店では自ら育てた野菜を使って料理を提供したいと考えている。「おいしいものがあるところには人が集まる。今の福島は野菜など『素材』でPRすることが多い印象だが、おいしい料理でPRしたい」。料理を学ぶため、学生のうちに世界屈指の美食の街として知られるスペイン・バスク地方のサン・セバスチャンに留学するのが、今の目標の一つだ。
「農家の復興への思いは強い。自分も一緒になって福島の農業を盛り上げたい」。本県農業の未来を切り開く人材の育成を目指して誕生した食農学類。開学から1年、その息吹が、確かに芽生え始めている。
◆1期生108人が学ぶ
福島大食農学類は、2019(平成31)年4月に開設された県内初の農学系新学部。1期生は108人で、県外出身者が約7割を占める。福島大の学類新設は04年の共生システム理工学類以来。今月中には福島市の同大キャンパス内に食農学類棟が完成する予定。
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