処理水風評対策に基金 政府に創設要望へ

 

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を受け、自民党東日本大震災復興加速化本部は6日、風評対策として政府に基金の創設を求める方針を固めた。風評被害が発生した場合、全国の課題に機動的に対応するのが狙い。海洋放出に伴い国産水産物の需要が落ち込む事態が想定される中、水産物を一時的に買い取ったり、販路拡大に役立てるなど、水産業関係者が事業を継続できるよう下支えする。

 自民復興本部は6日の総会で、処理水対策や復興施策を盛り込んだ第10次提言案を了承した。総会の冒頭で根本匠本部長代行(衆院福島2区)は処理水に関し「政府が前面に立ち、全責任を持って万全の対策を講じるべきだ」と語り、提言に明記する考えを示した。

 処理水対策は▽漁業者、国民の理解を得るための取り組み▽安全性の担保▽風評を起こさせないため説明と情報発信の徹底―などを政府一丸で実行するよう求める。関係各県の知事や海洋放出に反対する全漁連の意見を反映させた。

 被災地の水産業関係者への影響が大きいことを考慮し、販売促進と消費拡大の支援策も打ち出す。本県沖を含む常磐、三陸両エリアの水産加工品に関する情報を発信し、外食店でのフェア開催を働き掛ける。

 提言案では、原発事故の被災地の農業再生に向けた目標を初めて明示した。震災直後から営農を休止していた農地のうち、3分の2に当たる約1万ヘクタールで2025年度末までに営農再開を目指すとした。休耕地の一部は既に太陽光発電施設などに農地転用されており、目標面積から除く。

 また、政府が浜通りに計画する国際教育研究拠点の具体化も柱に据えた。「創造的復興」の中核と位置付け、日本の科学技術力、産業競争力を世界最高水準に引き上げる拠点にすべきだと強調。「技術立国復活ののろしを福島から上げる」との決意で、実現への検討を加速するよう念押しした。

 原発事故による帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域を巡り、帰還を希望する全ての人が20年代内に戻れるよう避難指示を解除することを政策目標とする。その前提として住民の意向を丁寧に把握し、帰還に必要な箇所を除染するとした。復興拠点と同様に除染には国費を充てる。

 自民復興本部は公明党との調整や党内手続きを経た上で、与党提言として来週にも政府に申し入れる。