原発事故の強制起訴控訴審、東電旧経営陣3人あす判決

 

 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった東電の勝俣恒久元会長(82)ら旧経営陣3人の控訴審判決公判が18日午後2時から、東京高裁(細田啓介裁判長)で開かれる。巨大津波を予見できたかどうかなどが争点。民事訴訟で予見可能性を認める複数の判決が出される中、原発事故を起こした企業トップの刑事責任の有無が判断される。

 被告は勝俣氏のほか、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)。昨年11月から計3回開かれた控訴審では、検察官役の指定弁護士が請求した裁判官による第1原発の現場検証や専門家の証人尋問は「必要性がない」として不採用となった。一方で国の地震予測「長期評価」の信頼性を認めた原発避難者訴訟控訴審判決文などは採用されており、指定弁護士側はその証拠をもとに旧経営陣3人が「長期評価に基づけば津波は予見できた」とし「一審判決には重大な誤りがある」と主張する。3人の弁護側は、長期評価には専門家の間でも手法や見解を疑問視する声があったとして「長期評価の信頼性を否定した一審判決に誤りはない」と控訴棄却を求めた。

 旧経営陣を巡っては昨年7月、民事の東電株主代表訴訟で東京地裁が勝俣元会長ら3人を含む旧経営陣の賠償責任を認め、計13兆3210億円の支払いを命令。津波は予見できたと評価した。

 2019年9月の一審判決は、津波の予見可能性がなかったとは言い難いとしながら、具体的根拠を伴う認識ではなかったと指摘。「津波の対策工事が終了するまで運転を停止すべきとの法律上の義務はなかった」と判断し、禁錮5年の求刑に対し3人とも無罪とした。

 3人は津波対策を怠り、浸水によって原発事故を招き、長時間の避難を余儀なくされた双葉病院(大熊町)の患者ら44人を死亡させたなどして、16年に強制起訴された。

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 強制起訴 検察が不起訴とした事件でも、市民でつくる検察審査会が「起訴相当」と議決すると検察が再捜査する。改めて不起訴となっても再び「起訴すべきだ」と議決すれば、裁判所が指定した検察官役の弁護士が起訴する。司法に市民感覚を反映させる目的で2009年、司法制度改革の柱として導入された。これまで10事件14人が強制起訴されたが、有罪確定は2事件2人にとどまり、検察が起訴を見送った事件で有罪を立証するハードルが高いとされる。