福島県漁連会長「社会的な安心、確保を」 処理水放出で声明

 

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海放出開始に合わせて福島県漁連の野崎哲会長は24日、政府が今回の放出に対して「全責任を持って対応する」としていることについて確実な約束の履行を求める声明を発表した。

 声明では「科学的な安全と社会的な安心は異なるもので、風評被害がなくなるわけではない」と漁業者が不安を感じていることを指摘。「最後の一滴の放出を見届けるまで漁業者の受け止めは予断を許さない」としている。

 【海洋放出開始に対する県漁連会長声明】

 8月22日、政府の廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において、ALPS処理水の海洋放出の開始が判断され、放出開始日は24日を見込むと公表された。

 ALPS処理水の海洋放出開始は、国家的見地から国が全責任を持って判断したものと思料するが、これまで一貫して申し上げてきた通り、漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない。

 一方で、IAEAによる「国際的な安全基準に合致する」とする包括的報告書や廃炉までの安全性確保へのコミット等、安全性における漁業者や国際社会への説明を通じて、科学的な安全性への理解は深まってきたことも事実である。

 しかしながら、科学的な安全と社会的な安心は異なるものであり、科学的に安全だからと言って風評被害がなくなるわけでない。

 廃炉に向けた取り組みは数十年の長期に及ぶことから漁業者の将来にわたる不安を拭い去ることはできない。

 我々漁業者は、生まれ育った前浜で事故以前のように安心して漁業を継続することが唯一の望みである。

 今回の決定は、廃炉作業のプロセスの一つに過ぎず、今後数十年にわたるALPS処理水の海洋放出に伴う国内外の風評被害や運用面も含めた安全性の担保等に対する国の対応を確認・見極め、緊張感をもって事業を監視しながら、最後の一滴の放出を見届けるまで、漁業者の受け止めは予断を許さない。

 この間、国においては、科学的な安全性のみならず社会的な安心を確保し、本県の漁業者やその後継者が子々孫々まで安心して漁業を続ける環境が損なわれることがないよう、「漁業者に寄り添い、必要な対策を取り続けることをたとえ今後数十年の長期にわたろうとも、全責任をもって対応する」との岸田総理の約束を確実に履行していくことを、強く求めるものである。
 2023年8月24日
 福島県漁業協同組合連合会 代表理事会長 野崎 哲
(原文のまま)