処理水放出半年、東電「計画通り」 廃炉作業で人為ミス相次ぐ

 

 東京電力福島第1原発からの処理水海洋放出が始まり、24日で半年となった。これまで3回の放出で約2万3400トンの放出を終えているが、運用面で目立ったトラブルはなく、東電は「計画通り」との認識を示す。一方、ほかの廃炉作業を見ると人為ミスに起因するトラブルが相次ぎ、廃炉の実施主体として東電の安全管理体制を疑問視する声が噴出している。安全で着実な廃炉を望む県民の不信感の払拭には至っていないのが現状だ。

 「処理水放出で注目される中で、汚染水処理設備でのトラブルは大きな影響だ」。20日に開かれた県廃炉安全監視協議会で、高坂潔県原子力対策監が声を上げた。高坂対策監が指すトラブルとは、今月上旬に発生した汚染水浄化設備がある建屋からの放射性物質を含む水の漏えいのことだ。弁の開閉状況の確認を協力企業作業員が怠った人為ミスが原因で、法律に基づき廃炉作業の手順を定めた実施計画に違反している疑いがある。

 昨秋には増設多核種除去設備(ALPS)で、雨がっぱを未着用だった作業員が放射性物質を含む水を浴びる事案も発生。このトラブルの再発防止策を実施する中での再度のトラブルでもあった。

 内堀雅雄知事は18日の福島復興再生協議会後の報道陣の取材に対し「こういったことが続くと信頼関係にひびが入る」と指摘、「国際的な信頼性の問題にも関わることになりかねない」と苦言を呈した。県議会からも対応を非難する声が相次いだ。

 東電の幹部は「廃炉作業は社会の信頼があって初めて進められるもの。現場の管理をしていく」と再発防止を強調する一方、一連のトラブルによる処理水放出への影響については「処理水の放出とは違う系統の作業だ」と明確に否定している。