9月10日から議論本格化 賠償指針見直へ、紛争審査会

 

 福島第1原発事故の損害賠償指針を検討する原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)は10日、指針の見直し議論を本格化させる。議論は避難指示解除後や住宅などの賠償がテーマ。県内被災地の視察を踏まえ、被災者の現状をどう指針に反映させるのかが焦点となっている。

 能見会長らは事故から2年が過ぎた今年5、6月に初めて被災地を視察。被災地の現状を目の当たりにした能見会長は「住宅の損傷は想像以上」と語った。この視察で審査会は指針見直しに着手。避難先に住宅を再建する際、現基準では実際の費用と賠償額に大きな差が出るケースがあり、住宅再建に向けた賠償額上積みも含め議論に入った。

 現地視察後、委員から被災者支援の在り方に関する意見も出始めた。6月に福島市で開いた審査会では、能見会長が賠償で対応できない課題を「政府に提言することも検討したい」との考えも示した。

 10日から議論がようやく本格化する指針見直し。委員の中には意見の相違があり、法律の原則を考えれば単純な賠償額の上積みも難しい。ただ、被災者にとって住まいの再建は、震災後の新生活を始めるきっかけとなり、審査会には被災者本位の対応が求められる。