復興へ踏み出す「農家」 あんぽ柿、3年ぶり"生産再開"

 
復興へ踏み出す「農家」 あんぽ柿、3年ぶり

3年ぶりの生産再開に意欲を燃やす岡崎さん。色づいた柿を見つめ、間近に迫った収穫期を待つ

 東京電力福島第1原発事故により2年連続で加工と出荷を自粛した県北地方特産の「あんぽ柿」は今年、加工を再開するモデル地区を設定し、3年ぶりに生産を再開する。「ようやくスタートが切れる」。生産再開を待ちわびた農家は、産地復活への期待を胸に新たな一歩を踏み出す。

 伊達の岡崎さん「待つ人に応えたい」

 「全国にあんぽ柿の産地の復活を示したい」。あんぽ柿発祥の地、伊達市梁川町五十沢地区の農家岡崎邦広さん(39)は生産再開に意欲を燃やす。産地を守るだけでなく「農家の生産意欲の回復にもつながる」と期待を込め、間近に迫った収穫期を待つ。

 岡崎さんにとって、柿が収穫期を迎える秋は原発事故後、丹精して育てた柿を捨てるつらい季節に変わった。地区内でも次第に手入れされない柿畑を見かけるようになり、自身も柿の栽培に身が入らない時期もあった。ただ、県内外の得意先から事故後も寄せられる励ましの声が心の支えとなった。「待ってくれている人の気持ちに応えたい。『おいしかったよ』という声が聞きたい」と、農家として生産意欲を奮い立たせた。

 生産農家の約半数に加工の再開が限られるモデル地区の設定は「仕方ない」と受け止め、生産を再開することに意義を感じている。「やめるのは簡単、復活するのは大変だが、継続することはもっと大変。本当に元に戻るまでには時間が掛かると思うが、とにかく続けていきたい」と前を向く。