思い描く"昔の豊間" 中華はまや、地元住民の再会の場に

 
思い描く

「懐かしい味だねと言われるとやってよかったと実感する」と話す馬目さん。妻美智子さん(右)らと新たな気持ちで店をスタートした=「中華はまや」

 「近所のばあちゃんや孫たちが言葉を交わす昔の豊間に戻ることができるよう、少しでもまちづくりに貢献したい」。とよマルシェに出店した「中華はまや」の店主馬目正幸さん(62)は厨房(ちゅうぼう)で忙しく料理しながら、生き生きとした表情で語った。

 父の故福弥さんが始めた店を継ぎ、地元のラーメン店として長く愛されてきた。津波で店は流失し、基礎だけになった。震災後は一時的に県外の長女の元へ避難。同市へ戻ってからはハローワークで求人を見つけ、人生初の面接を受けて博物館での慣れない仕事を体験した。被災による精神的な疲れと資金面の問題で、店を再開する考えは毛頭なかった。2013(平成25)年夏ごろ、とよマルシェ立ち上げに取り組んでいたふるさと豊間復興協議会の鈴木徳夫会長(当時)から声が掛かった。「おめえ、来ねえか。豊間を元気づけるには昔からの店に戻ってきてもらいたいんだ」。「やるなら地元で」と心に秘めていた馬目さんは、再開を決心した。4年近いブランクを埋めようと、馬目さんは同市にある弟の吉野和久さん(60)の店「中華料理華正樓(かせいろう)」を手伝い、徐々に勘を取り戻していった。「いろいろな人のおかげで今がある」と何度も感謝を口にする。

 店は妻美智子さん(58)、次女美由季さん(32)と3人で切り盛りする。「『懐かしい』と言って来てくれる人たちがいるだけでもやってよかったと思う」。店は地元住民の再会の場でもある。昔ながらのしょうゆラーメンの味が地元住民を呼び込み、地域の絆を固く結ぶ。

 「災害公営住宅」192戸が完成 

 いわき市平豊間は地区の8割以上が津波被害による大打撃を受けた。地区役員らでつくる「ふるさと豊間復興協議会」が地域の再建へ向けて市と協議を続けながら、地域が一丸となって復興を進めている。

 豊間には、災害公営住宅192戸(集合住宅168戸、戸建て住宅24戸)が完成。とよマルシェは地元に戻ってきた住民の購買を支える場所として整備された。同協議会の遠藤守俊会長(70)は「とよマルシェが完成して利便性が上がっている。離れ離れになった人たちが集まり、地域のコミュニティー再生にも一役買っている」と話す。