風評払拭...一歩ずつ 福島県の観光再生へ関係者の努力続く

 
相馬野馬追

 東京電力福島第1原発事故による風評被害が根強い中、本県の観光再生へ関係者の努力が続く。観光客入り込み数は回復傾向にあるが、東日本大震災前まで回復していない。県やJRなどは4月、昨年実施したふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)に続くアフターDCを展開、市町村を挙げての取り組みで観光誘客につなげる。

 池田和也土湯温泉観光協会事務局長 土湯温泉をみれば「若旦那図鑑」の発行や再生可能エネルギー体験ツアーの実施など、震災前はなかった取り組みが実を結び、客足が戻りつつある。今後は外国人観光客がターゲットになると考えられる。「爆買い」で訪れた中国人を東北に呼び込みたい。下呂温泉のある岐阜県など中部9県は観光名所を結ぶ観光ルート「昇龍道」で誘客に成功した。温泉地、観光名所と連携した取り組みと旅行プログラムを考え、福島に来たいと思う魅力をつくることが重要になる。

 菊地幸一郡山市観光課長 観光客入り込み数の伸びが数字に表れている。ふくしまDCに加え、B―1グランプリなど復興支援のイベントや全国規模の学会、会議などが相次いだことが要因とみられる。今後は、広域観光と、伸び続ける海外からの観光客の取り込みが重要になる。外国人向けに国が認定した「日本の奥の院・東北探訪ルート」などを生かした取り組みを進める。猪苗代湖を中心とした安積疏水、安積開拓の歴史を日本遺産に申請しており、国内外からの誘客に力を入れていく。

 渡辺弘幸いわき観光まちづくりビューロー専務理事・事務局長 いわきの観光再生は7割程度とみる。観光客は回復傾向にあるが、温泉旅館などの宿泊客は伸び悩む。漁業が試験操業の状況であり、操業が本格化しない限り、いわきの観光物産の核である水産物加工品は勢いを取り戻すことができない。観光振興策としては4月から展開される「いわきサンシャイン博」に期待している。市内各地域の観光の「宝」を磨き上げ、組み合わせることで観光誘客を図り、いわきの食文化などを全国に発信していきたい。

 渋川恵男会津若松観光ビューロー理事長 NHK大河ドラマ「八重の桜」やふくしまDCなどの効果もあり、観光客数はほぼ震災前まで戻った。1割まで落ち込んだ教育旅行は7割近くまで回復している。震災から5年の今年を切り替えの年と位置付ける。「支援観光」はありがたいが、依存してはいけない。会津の魅力を抽出して「自力の観光」に転換することが必要だ。素材の磨き上げと同時にアニメや漫画を活用して外国人や若者を呼び込みたい。観光で復興を先導する役割を果たしたい。

 橋本喜人白河観光物産協会事務局長 白河市のシンボル、小峰城跡の三重櫓(やぐら)の一般公開が再開され、全国のご当地キャラが集う「ご当地キャラこども夢フェスタ」が開催された効果もあり、ふくしまDC期間中の昨年4~6月に約50万人が訪れた。震災で離れた観光客が着実に戻っていると実感している。今後は首都圏だけでなく、宮城や山形などの近県と海外へのPRに取り組む。西郷村の甲子温泉をはじめ西白河、東白川両郡の観光資源も活用しながら、県南地域が一丸となって集客を図りたい。

 高橋真南相馬観光協会事務局長 震災、原発事故以前は相馬野馬追以外に主だった観光資源はなかったと思える。そういった意味では現在の状況が観光再生という表現にふさわしいかどうか分からない。観光という名目から外れるかもしれないが、被災地視察で多くの人が訪れており、本年度は4000人以上が足を運んでいる。震災、原発事故以降、南相馬市が注目を集めているためだ。今後は市外から来る人が何を求めているのかを把握し、地元の人が地元の観光資源を見つめ直して提案していくことが必要になってくる。

 湯田浩光下郷町観光協会事務局長 大内宿をはじめ町内の観光名所を訪れる観光客数は年間100万人台まで回復している。震災、原発事故後の5年間、観光キャラバンなど継続的に取り組んできた風評対策が成果を上げつつある。特に2013(平成25)年は「八重の桜」が追い風となった。それでも震災前の水準には至っていない。東京五輪の開催決定で注目を浴び、今後も海外から日本を訪れる観光客の増加が予想される。町にも外国人観光客を誘客できるよう一層の魅力発信に力を尽くしたい。