【富岡町】 帳簿や写真...歩み残す 文化財の消失を防ぐ

 
【富岡町】 帳簿や写真...歩み残す 文化財の消失を防ぐ

町内から搬出した資料を整理する磯倉さん

 原発事故の影響で全町避難が続く富岡町は、解体除染に伴い民家に残されている文化財が失われるのを防ぐため、プロジェクトチームを設立し保全活動を続けている。

 メンバーで町教育総務課生涯学習係主事の磯倉真友さん(22)は郡山市出身だが、避難する町民を目の当たりにし「富岡のために何かしたい」と2013(平成25)年4月に町職員となった。

 対象は古文書などに限らず、帳簿や写真といった町の歩みが記録された物全般。町民への聞き取りを担当する磯倉さんは「町と町民の間で資料に対する価値観が異なり、説明が難しい」と苦慮する。貴重な資料でも町民にとってはただの写真やメモにすぎないこともあり「美術的価値だけでなく地域的価値を知ってもらうことが大切」と丁寧な説明を心掛ける。

 町は1月、郡山市との共催で搬出資料の展示会を開いた。両市町が互いの地域に関心を持つことで会話や理解が生まれ、町民の心の復興にもつなげるのが狙いだ。磯倉さんも「行動しなければ何も残らない。今は地道な作業だが、帰還した時に、必ず大きな結果につながると感じている」と言葉に力を込めた。