コメ全袋検査、生産者の負担・効果課題 求められる丁寧な検討

 

 東京電力福島第1原発事故に伴い、2012(平成24)年産米から6年間継続され、食の安全確保の象徴的な取り組みとなっているコメの全量全袋検査が、今後の検査体制を巡り岐路を迎えている。全袋検査で県産米の安全性が証明される一方、検査場まで運搬する負担や費用対効果などが課題に上る。県は年度内に、より効率的な検査方法への移行に向けた方向性をまとめるが、消費者や生産者らの声は「見直し」「継続」などさまざまで、丁寧な検討が求められそうだ。

 県によると、全袋検査の検査場は県内173カ所にあり、生産者らが持ち込んだ玄米(1袋30キロ)をベルトコンベヤー式の機器で1点ずつ検査し、放射性セシウム濃度を測定している。検査機器の台数は計203台で、約1700人が検査に携わっている。

 これまでの全袋検査の結果、毎年検査する玄米1000万点以上の99%が測定下限値(1キロ当たり25ベクレル)未満となっている。15、16年の2年間は、食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えたケースはない。17年産も今月8日現在、測定した約670万点で基準値超えはなく、99%が測定下限値未満となっている。全袋検査にかかる経費は年間約60億円。うち約52億円は東京電力に損害賠償として請求し、残り約7億円は国費で賄われている。

 県は7月、JA福島中央会や県米穀肥料協同組合、県消費者団体連絡協議会などでつくる検討会を設置。これまでの検査実績や課題、関係者への幅広い聞き取り調査などを踏まえて検討を進めている。

 新たな検査方法を巡っては、野菜や果物などと同様に1市町村当たり数点、農家1戸当たり数点などとする抽出方式や、原発事故で避難指示の出た12市町村を除いた地域での見直し、出荷米のみを検査対象とする方法などが想定されるが、具体的な方向性は今後の検討課題となっている。

 販売の利点「なし」49%、「あり」47%

 福島市で8日に開かれた検討会で、県が示した生産者325人を対象にした聞き取り調査の結果では、コメの全量全袋検査による販売時の利点が「ない」と答えたのは161人(49.5%)で、「ある」と答えた154人(47.3%)をわずかに上回った。

 検査への負担に関する質問では、「ある」が52.0%の169人、「ない」が47.3%の154人だった。

 聞き取り調査は8月から約1カ月、作付面積1ヘクタール未満~100ヘクタール超えの個人と法人を対象に行われた。