震災から10年過ぎれば関心は低下...あと2年、正確な情報を発信

 

 風評被害に詳しい東大大学院の関谷直也准教授(43)=災害情報論=は「震災から10年過ぎれば関心は低下し、報道も少なくなる。それまであと2年。それまでに正確な情報を発信したい」と指摘する。

 政府の問題でもある

 関谷氏は「県内では知識の浸透が進んでいるが、県外に対してはまだ不十分。スクリーニング検査などの認知度はまだ低い。県内では十分な認知度だが、今後も情報発信を継続する必要がある」と強調。「情報発信は県だけではなく政府の問題でもある。本県産農産物などのおいしさや魅力のPRが進んでいるが、検査体制などの周知がなされない限り十分でない」との見方を示す。

 また「県内の検査体制や検査の結果、安全に問題がないということ、コメの全量全袋検査を継続するかという議論の段階に進んでいることなどをアピールする必要がある」とも指摘。コメの全量全袋検査の県外の認知度が「約6割から5割」とした上で「認知度が低ければ、いくらおいしさや魅力をアピールしても、一部の極端な人の思想を退けることが難しい」と話す。

 県内外の「風評」という言葉の持つ意味合いについては「県内では、風評というと店の棚を失ったことや流通が戻らないことなどを含めた総称を指す。県外ではその意味が伝わらず、放射性物質にまつわる面だけが伝わり、誤解を生んでいる」とする。

 懸念減らすのが先

 PRの手法については「『おいしいから』など(県の)魅力のPRが先走っているが、なかなか前提の安全性のPRが進んでいない」と指摘。「おいしさや魅力のPRはどこの県でもやっている。福島にとってネックになるのは原発事故の経験。風評払拭(ふっしょく)のためには魅力より先に事故の克服で懸念を少しでも減らす必要がある」としている。

 関谷氏は県外での震災、原発事故への関心の低下を繰り返し強調。「震災直後はデータもなく不安が大きかった。いろんな意見が飛び交った。時間がたち、放射線の影響などがある程度分かってきた。時間がたったことで落ち着いた議論ができるようになった」として、改めて県産品や生活環境の安全性を示すデータを県外にも発信していく必要があるとした。