古里再生へ『次代の人材育成』模索続く 4町村、避難解除から2年

 

 東京電力福島第1原発事故による浪江、富岡、川俣(山木屋)、飯舘の4町村で帰還困難区域を除く避難指示が解除されて2年が経過した。古里再生に向けた取り組みが一歩ずつ進む一方、次代を担う人材育成に向けた地元での教育を取り巻く課題は山積している。

 「少人数」の魅力づくり

 【浪江町】浪江町に昨年4月に開校した、なみえ創成小・中。本年度は小学校に14人、中学校には2人が通学する。少人数を生かした校外学習や体験活動など魅力づくりに力を入れるとともに、今後は外部講師の活用や海外学習などにも取り組むという。
 同校ばかりでなく、浪江小、津島小とも児童は1人にとどまっている。町教委は児童、生徒の確保に向けて、教育に関する情報提供に加えて、町内の住宅や雇用などについて情報を提供するなど、保護者の負担軽減を図っている。
 同町には、ゆかりがあって戻ってくる保護者だけでなく、仕事などで新たに移り住む保護者もいる。町教委の担当者は「少人数をデメリットとせず、少人数だからこそできるという視点も大事にしたい」と強調。また「少人数であれば、全員が主役になれる。主体性が養われるだろう」と魅力を訴える。

 「郷土愛」育む授業に力

 【富岡町】富岡町の富岡一中の校舎を活用して昨年4月、7年ぶりに地元で授業を再開した富岡一、二両小と富岡一、二両中の4校。今月からは転校生を加え、小学校16人、中学校8人の計24人で避難指示解除から2年目の春を迎える。
 震災、原発事故前の4校の児童、生徒数は約1500人で、かつての学校の姿とは程遠い。それでも小学校の岩崎秀一校長(59)は「富岡町が古里だと子どもたちが胸を張って言える教育に取り組んでいく」と前を向く。
 再開後の1年間、地域に根付いていた伝統の太鼓演奏や古里の歴史に触れてもらおうと、町内に戻った住民を講師に招いた授業を実践。原発事故に伴う児童、生徒の減少という課題を克服しようと、富岡、浪江、葛尾3町村の小学校4校の児童がテレビ会議システムを使って一緒に学習する遠隔合同授業も試みた。岩崎校長は「今後も子どもたちの郷土愛を育み、魅力に感じてもらえるような特色ある授業を行いたい」と語る。

 児童、生徒確保へ独自策

 【川俣町・山木屋地区】川俣町山木屋地区の施設一体型の山木屋小中一貫校は、小学生5人、中学生10人で再開したが、本年度は小学生がゼロになり、休校となった。中学生は3年生3人のみで、児童、生徒の確保に苦慮する現状は続く。
 町教委は児童、生徒に1人1台のタブレット端末を支給するなど最先端の学習環境を整備。帰還した住民らとの触れ合いを通して郷土愛を育む教育にも力を入れ、「山木屋だったからこそ受けることができた教育があり、地元で再開できたことは非常に良かった」(町教委)とする。
 ただ、小学6年生5人が卒業したことで本年度は小学校に在籍する児童がおらず、小学校は休校措置を余儀なくされた。中学校も在籍する3人が卒業すると、生徒不在で休校を迫られる。
 現状打破に向けて、町教委は、同町の子どもなら山木屋小、中学校に通える制度を導入し、児童、生徒を募る。休校した山木屋小を巡っては、通学希望者が現れた場合、すぐに学校の再開を認める制度を県教委が特例で設けた。
 学校の存続へ正念場が続く山木屋地区。佐久間裕晴教育長は「学校は山木屋地区の復興の大切な拠点であり、山木屋ならではの教育を積極的にアピールしていきたい」と力を込める。

 「0~15歳」一体に成果

 【飯舘村】飯舘村に昨春、開園、再開した認定こども園、小、中学校には本年度、村内や避難先から計109人が通う。学校再開から1年が過ぎ、村教委は「幼児から中学生までが一体となった行事が成功するなど、成果は大きい」と一定の手応えを示す。
 当初、村内での学校再開を前に村教委が行ったアンケートでは、村内への通園、通学希望者は52人。村教委は説明会を重ねるなどして笑いを授業に活用する「笑育」や関東の学習塾と協力した「村塾」など特色ある授業をアピール。開校時には、104人が村の学校を選んだ。
 その後も認定こども園を中心に子どもの数は増え、2018(平成30)年度は最終的に114人が古里の学校に通った。認定こども園、小、中学校が合同で取り組んだ運動会や文化祭などでは、中学生が下の学年の面倒を見る光景なども見られ、「0~15歳の一貫教育の良さが出せている」(村教委)という。
 本年度は小学校の大半の学年の児童が10人未満で、1人の学年もあるなど児童数の確保には課題もある。それでも村教委は「古里が復興する様子をつぶさに感じられる」と効果を強調。20年度には義務教育学校への移行も控え、村教委は「『までいな教育』を推し進めていく」としている。