大熊町長・渡辺利綱氏に聞く 復興実感も...「避難解除は通過点」

 
渡辺大熊町長

 一部地域での避難指示が解除され間もなく5カ月を迎える大熊町。渡辺利綱町長にこの5カ月を振り返ってもらうとともに、今後の課題などを聞いた。

 ―避難指示が解除されて5カ月が経過する。
 「役場庁舎が5月に大川原地区に開庁し、町内に役場機能が戻った。ようやく復興のスタート地点に立てたが、一つのよりどころができたのは大きい。同じ屋根の下で約100人の職員が働いており、役場に立ち寄る住民もいる。そのときに、災害公営住宅をはじめ、町内の復興を実感してもらえると思う。避難指示解除は通過点だが、大きな節目だった」

 ―新産業の創出が重要になってくる。
 「帰還困難区域の夫沢地区で、来春の稼働を目指してリサイクルセンターを着工した。約8ヘクタールの用地で、不燃性廃棄物や太陽光パネルなどの再利用を図る事業に取り組む。全国で太陽光発電の建設が進んだが、今後は寿命を迎える太陽光パネルの増加が見込まれる。民間企業の技術を受け、来年にも試験受け入れを開始し、リサイクルの研究開発を進める。地球温暖化や廃プラスチックなど、環境に関わる問題は多い。町としては、それらの問題に知見や経験を持つ企業や関係機関を呼び込みたい」

 ―帰還した住民にとって医療面の不安が大きい。
 「双葉郡の被災者にとって、医療と福祉が一番の問題。町としては診療所の整備を検討しており、来年にも医師を確保したい。当面の対処として、近隣自治体の医療機関を巡るバスを運行することで、帰還住民の不安解消につなげたい」