双葉町...「先行解除」目標まであと半年 住民帰還、段階的に対応

 

 東京電力福島第1原発事故に伴う全町避難が唯一続いている双葉町。目標に掲げる来年3月末までの一部地域の避難指示解除まで、あと半年となった。町は先行解除に合わせ、帰還困難区域のうち、人が住めるように整備する特定復興再生拠点区域(復興拠点)全域の立ち入り規制の緩和を目指しており、町内では除染作業や建物の解体などが急ピッチで進められている。

 「規制緩和」復興を加速 駅中心に生活環境整備

 「避難が長期化したことで『町に戻りたい』という思いと、実際に『町で生活する』ことの間に必ずギャップが生まれる。帰還を望む町民のためにも、段階的な対応が必要ではないか」。伊沢史朗町長は、来年春の先行解除と、立ち入り規制緩和の意義を語る。

 来年春に先行解除を目指す区域は、JR双葉駅周辺のごく一部や避難指示解除準備区域全域などにとどまる。「規制緩和」には、通行証がなくても復興拠点内に自由に立ち入ることができるようにすることで、一時帰宅する町民の利便性の向上を図り、復興の状況を自らの目で確認、実感してもらう狙いがある。

 さらに現在、駅周辺では除染作業と建物の解体が一体的に進められており、新たなまちづくりの基盤となる更地が増加している。駅西側の地区では1日、復興拠点内で初めて宅地の造成などが始まった。駅東側には広場が整備される。

 町が目標に掲げる町民帰還の開始時期は2022年春。先行解除と立ち入り規制の緩和で、復旧、復興関連の事業者の出入りが容易になり、来年3月末までのJR常磐線全線開通に照準を合わせて新設工事が進められている駅を中心とした生活環境の整備の加速が期待される。

 先行解除と規制緩和に向けては、空間放射線量などを検証している町の委員会が9月27日、「放射線量は十分低減している」とする検証結果をまとめた。ただ、除染していない区域からの影響で、先行解除の対象となっている町道の一部などに線量が高い地点があることも確認。委員会は「早急に除染に着手して線量の低減化を図るべきだ」と指摘した。また、倒壊の危険のある建物の解体撤去や道路の除草など、住民、来訪者の安全確保、立ち入りに適した環境整備も課題に挙げた。

 委員会の報告を受け、町は国に速やかな除染による線量低減を強く要請。先行解除と規制緩和に向けた環境整備も、国や県などと連携して進める方針だ。