富岡町民...「避難指示解除まで住宅支援を」 生活の先行きに不安

 
避難先での暮らしについて会話を交わす鎌田さん(右)

 もうすぐ住宅支援も終わる。年々、被災者への冷たい対応が目立つ」。帰還困難区域の富岡町夜の森駅前北行政区の住民が11月下旬、楢葉町の温泉施設に集まった。酒宴が始まると、住民は再会を喜びながらも、生活の先行きに不安をこぼした。

 同行政区は帰還困難区域のうち、再び人が住めるように整備される特定復興再生拠点区域。ただ、町が目指す避難指示の解除の時期は3年以上先の2023年春だ。

 「まだ帰ることができないのに、なぜ打ち切られるのか」。郡山市安積町の借り上げ住宅で避難生活を送る鎌田和義さん(68)は息巻いた。富岡町民への仮設住宅と借り上げ住宅の無償提供は来年3月末で終わる。住宅の再建が完了していないなどの事情がある場合は個別に1年間延長する方針が示されているが、集まった住民は「避難指示が解除されるまでは住宅支援を続けるべきではないか」と求めた。

 震災、原発事故から8年9カ月。「帰っても眼科がない」「介護サービスを受けられるのか」。酒宴の話題では、帰還に向けた不安も飛び交った。

 住民が抱える課題が個別化、複雑化する中、設置期限が10年間延長される復興庁。鎌田さんは「大変心強い。ただ、薄れつつある『被災地に寄り添う』という理念を貫き、被災者の心情を踏まえて復興を進めてほしい」と願う。