「復興庁」10年延長...教訓共有し災害時活用 復興財源確保が焦点

 

 復興・創生期間が終わる2021年度以降の復興施策を巡り、政府の推進体制を定める議論が大詰めを迎えた。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から8年9カ月を迎えてもなお、本県復興は道半ば。政府は、復興庁の設置期限を20年度末から10年間延長し、30年度末までにする方針だ。

 復興庁は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を担う政府の組織として、2012年2月10日に発足した。同庁設置法に基づき21年3月末での廃止が定められている。しかし本県、宮城、岩手の被災3県から21年4月以降も存続を求める声が相次いだ。

 与党の8次提言や3県の要望を踏まえ、政府は基本方針案で現行体制のまま存続させるとした。首相直属の組織とした上で専任閣僚を置き、復興予算の一括要求といった省庁を束ねる機能を継承する。復興庁延長などを盛り込んだ21年度以降の復興の基本方針を今月中に閣議決定し、来年の通常国会で法整備を目指す。

 政府、与党内では一時、金融庁と同じような内閣府外局に移す案や、省庁間の調整を担う部局(内局)とする案などが出た。ただ、その場合、現行体制より司令塔機能が弱まり、組織の「格下げ」を懸念する被災地に配慮して見送られた。

 このため、復興庁に新たに震災で得られた教訓や復興のノウハウを県や市町村などと共有する機能を加える。「ポスト復興庁」を巡る議論では全国知事会が政府に対し、防災と復興の機能を併せ持つ「防災省(庁)」の設置を提言した経緯があり、震災後も全国で相次いでいる大規模災害対応に生かす狙いがある。

 被災地が復興施策に腰を据えて取り組むには、それを後押しする政府の組織と予算の両方が欠かせない。県は21年度以降の財源確保を最重点項目と位置付け、政府に強く要望している。

 政府は基本方針案で、21~25年度の5年間の復興事業に必要な予算規模が「1兆円台半ば」となる試算を初めて明らかにした。通常予算とは別枠の震災復興特別会計(復興特会)を存続し、まずは25年度までに必要な財源確保を明記した。

 自治体に配る震災復興特別交付税を継続する一方、主に地震と津波で被災したインフラ復旧に充ててきた復興交付金を20年度末で廃止。本県復興を支援する福島再生加速化交付金は21年度以降も存続する方向だ。

 今後の焦点は、予算規模に応じた財源の捻出策だ。復興特会は、所得税額に25年間2.1%を上乗せする「復興特別所得税」などで20年度までに約32兆円を確保した。復興庁は25年度までの事業費を総額32兆円台後半と見込んだ。所得税額の伸びから32兆円台後半を確保でき、財源を賄えるとの見通しを示している。

 政府は16~20年度の復興事業の一部で地元負担を導入し、21年度以降は地元負担が増える可能性もある。帰還困難区域の再生など不透明な部分があり、事業費が膨らみかねない情勢だ。

 政府は来夏をめどに、21年度以降の詳しい予算規模や財源を固めたい考えだ。