復興支える『体づくり』重要! 健康増進へ拠点施設に運動設備

 
運動設備が充実し、町民の健康づくりの拠点となっているならはスカイアリーナ

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年目となる2020年が幕を開けた。原発事故に伴って避難を余儀なくされた住民の帰還が進む中、復興を支えていく住民の健康づくりは、各自治体にとって大きな課題だ。住民の健康増進に向け、各地に誕生した拠点施設を訪ねた。

 ジム、気軽な教室充実

 【楢葉】楢葉町中心部の高台に整備された屋内体育施設「ならはスカイアリーナ」。最新の運動設備が備えられているほか、エクササイズ教室などが開かれ、住民の健康づくりの拠点となっている。

 町内に帰還した住民3899人のうち、65歳以上の高齢者は4割近くを占める1453人(昨年11月末現在)。町は町民の健康増進を震災後の重点施策の一つに位置付けており、昨年4月に施設をオープンさせた。2階建てで延べ床面積約6600平方メートルの館内は県内最大級で、温水プールやフィットネスジム、バスケットボールなど多彩な球技で利用できるアリーナを備える。

 館内の一角には町スポーツ協会が事務所を構え、さまざまな健康イベントを企画。スタッフの一人、遠藤ノブ子さん(68)は「道具を持参せずに参加できることが大事なテーマ」と、住民が気軽に取り組める運動プログラムの充実に力を注ぐ。人気の教室の一つは、毎月2回開催している「いいやんべエクササイズ」。地元の方言で「いい塩梅(あんばい)」を意味する「いいやんべ」の言葉通り、自分のペースで無理をせずにストレッチなどに取り組める内容が好評だ。

 昨秋は震災後で初めて、町内の小学生を対象にしたファミリーゴルフ大会を開いた。「子どもも少しずつ町に戻ってきている。高齢者と子どもが交流しながら運動を楽しめるような機会もつくっていきたい」と遠藤さん。世代を問わず、帰還した住民の健康を願う。

 機器多彩、年代幅広く

 【浪江】原発事故による避難指示が一部地域で2017(平成29)年3月に解除された浪江町は、JR浪江駅西側にある町地域スポーツセンター内にトレーニングルームを整備した。解除から間もなく3年を迎える中、20代から70代まで幅広い年代の帰還した住民らが、トレーニングに汗を流す。

 トレーニングルームには、ランニングマシンや自転車型トレーニングマシンなど多彩な機器がそろう。

 町民や町内の事業所に勤める人などが多く利用し、日ごろの運動不足解消や体力維持などに取り組んでいる。町によると、1日当たり20~30人が訪れるという。

 日中は高齢者、夕方以降は仕事帰りの人たちでにぎわう。「高齢者には適度な運動が必要だ。休まないようにと思って毎日利用している」と話すのは、町議の紺野栄重さん(72)。事前予約不要、無料で利用できるだけに「気軽に利用できる施設。多くの人に利用してほしい」。町民の健康づくりに向けてアピールも忘れない。

 施設新設、コース整備へ

 【富岡】富岡町は、人が再び住めるよう整備される町北東部の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の再生に向けた柱に健康づくりを掲げる。健康増進施設の新設をはじめ、ランニングやウオーキングを楽しめるコースを整備するなど新たなまちづくりを進める。

 健康増進施設は、原発事故に伴い運営を休止している町健康増進センター「リフレ富岡」を解体して新設する。温泉や幅広い世代が気軽に体を動かせる運動スペースを設ける予定。

 ランニングやウオーキングのコースは、町民の憩いの場として親しまれていた夜の森つつみ公園周辺に整備し、町のシンボルとなっている夜の森地区の桜並木を周遊するランニングのモデルコースも設定する方針だ。

 町は2023年春の復興拠点の避難指示解除を目指している。復興拠点のうち、JR夜ノ森駅周辺の一部地区は3月10日、避難指示が先行解除される。町は「健康寿命を延ばし、町民が元気で生き生きと暮らせるまちにしたい」と将来像を描く。