福島第1原発...廃炉『40年後』維持 中長期ロードマップを改定

 
敷地内には放射性物質で汚染された水を浄化した処理水のタンクが林立している

 東京電力福島第1原発は事故発生から間もなく9年を迎える。廃炉に向けた工程表では廃炉まで30~40年を見込んでおり、長い道のりが続く。最難関とされる溶け落ちた燃料(デブリ)の取り出しは2021年から2号機で始める計画だが、順調に進むかは不透明だ。原子炉内の状況把握や機器開発は途中段階。廃炉作業を巡る課題は山積している。

 政府は昨年12月、東京電力福島第1原発の廃炉に向けた工程表「中長期ロードマップ」を改定した。廃炉の完了時期は2011年を起点に「30~40年後」を維持する一方、1、2号機の使用済み核燃料プールから燃料の搬出を始める時期は最大5年遅らせた。屋外で保管しているがれきなどの放射性廃棄物を28年度に建物内に移し終えるとの新たな目標も示した。一方で、原子炉や周辺設備など放射線量が高いものや事故で汚染されたものもやがて廃棄物になるが、総量や処分方針は明示されていない。

 工程表は11年12月に初めて作成し、今回は5回目の改定。リスクが高いものとして、プールの燃料と、溶融核燃料(デブリ)に触れて放射性物質を含んだ汚染水を挙げ、最優先で取り組むと位置付けている。廃炉までを3期に分けており、現在は「デブリの取り出しを始めるまで」の第2期に当たる。デブリ取り出しは、21年に2号機で始める計画。

 1~3号機原子炉建屋に地下水や雨水が流入してできる汚染水は、25年に1日当たりの発生量を100トン以下に減らすとした。現在は170トン程度で推移している。

 これまでの作業で回収したがれきや作業員が使った防護服などの低レベル放射性廃棄物は、既存の貯蔵庫に収容しきれず、敷地内で屋外保管している。試算では、こうした廃棄物は30年ごろに約77万立方メートルになる。東電は敷地内の北側に焼却設備などを新設し、量を約25万立方メートルに減らすとともに、貯蔵庫を増やして屋外保管を解消する方針だ。

 一方で、試算には含まれない廃棄物もある。解体する原子炉建屋などの建物と中の設備、がれき、汚染水を浄化後の処理水を保管するタンクなどだ。通常の廃炉作業では生じないものも多い。詳しい処分方法や撤去時期は未定で、総量も不明だ。東電関係者は「試算の何倍の量に膨らむのか、とても見通せない」と悩む