福島県産米「抽出検査」移行...周知課題 農家の負担軽減など期待

 
「放射性物質検査済の安全なお米です」と書かれたステッカーが貼られた県産米のコメ袋

 県は東京電力福島第1原発事故後、全ての県産米の放射性物質を調べる「全量全袋検査」について、2020年産米からサンプルだけを調べる抽出検査に移行する。検査条件の緩和に伴い、検査場にコメを運ぶ農家の負担軽減などが期待されている。

 原発事故後、農家には検査場を予約し、コメを運ぶなどの作業が加わっていた。検査には数日から長くて1週間ほどを要したほか、ほとんどの農家は検査から戻ってきたコメの袋に任意の「検査済みラベル」を貼って出荷しており、収穫から出荷までに時間がかかっていた。

 大玉村の今井農園代表の今井雄治さん(48)は「収穫から出荷までの時間短縮にはつながると考えられる。作業の手間が減るのは、一ついいことではある」と語る。しかし、生産者にとって気掛かりなのが消費者が「納得して買ってくれるか」ということだ。
 全袋検査は県産米の安全性を客観的に証明できる利点があった。しかし、県によると全袋検査で農家に配布していた「検査済みラベル」は、抽出検査では貼らなくなるという。

 今井さんは「ラベルを見て買ってくれていた消費者のことを思うと、移行には不安が残る。行政側で安全性のPRと、抽出でも大丈夫だということを分かりやすく消費者に伝えてほしい」と語った。

 県産米は15年産以降、食品に含まれる放射性物質の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を全て下回っている。県は基準値を超えるコメが通算5年間出ないことを条件に抽出検査に移行する方針を示していた。