「立体物が訴える力はすごい」 福島大・震災資料『20万点』収集

 
空き家に侵入したイノシシに汚されたふすまを見つめる柳沼さん

 住民が避難した空き家に侵入したイノシシに汚されたふすま、避難区域の小学校の教室に子どもが残したメッセージ、津波で泥をかぶったランドセル...。福島大のうつくしまふくしま未来支援センターが収集した資料は20万点に上る。東日本大震災・原子力災害伝承館に展示するため県の委託を受け、2017年から約3年にわたり資料を集めてきた。

 「立体物が訴える力はすごい。どうすれば、放射線という目に見えないものとの闘いが伝わるのだろうかと考えていた」。収集活動を統括する特任教授の柳沼賢治さん(63)は、単なる「数集め」にならないよう意識して歩いたという。

 研究員数人と一緒に浜通りの市町村を歩きながら、質やジャンルに偏りがなく、「資料の百科事典」になることを目指した。研究室には震災と原発事故の記憶を伝える資料が並ぶ。

 「原子力災害への備えの甘さの象徴」と批判され、昨年解体されたオフサイトセンター(大熊町)にも入り、メモが書き残されたホワイトボードを収集した。「批判されたものは残らない。われわれにとっては重要な資料だ」と振り返る。

 一方、「事故を思い出したくない人もいるのでは」と被災者の思いを推し量る。「『原発事故を忘れないで』などと大きな声で訴えたくない。細々と集めていけばいい」と静かに語る。