「町に商工業者戻ってくる」 幅広い業種の廃炉産業参入求める声

 
建物の解体とともに更地も増えている中央商店街。店主の帰還の動きも鈍い=富岡町

 東京電力福島第2原発の廃止措置計画で示された全4基の廃炉に要する期間は44年。この間、東電は廃炉を通じて地域振興に取り組む方針を掲げるが、地元は構内の除染や施設解体など廃炉作業に直接携われる建設業に仕事の受注が限定されると懸念する。小売業やサービス業など、幅広い業種が廃炉産業に参入できる仕組みづくりを求める声が強まっている。

 「需要があれば町に商工業者が戻ってくるかもしれない」。町商工会理事でいわき市でホテルを経営する早川恒久さん(51)=富岡町出身=は、廃炉産業が町の経済再生を後押しする力になるとみる。原発事故の影響で営業を休止している物販関係やサービス関連の業者は、廃炉産業に参入の余地があれば事業再開に意欲を示しているという。

 富岡町で2月26日に東電幹部らを交えて開かれた町議会特別委員会。「多少高くても、(県外の)大手ではなく地元の業者を活用してほしい」。町議も務める早川さんをはじめ、他の町議は廃炉に伴い必要となる物品を調達する際、地元業者を積極的に活用するよう求めた。

 かつて商店など約60店舗が軒を連ねた町中心部の中央商店街は、原発事故の影響で建物が劣化、店主の帰還も進まず大半が取り壊された。現在、事業を再開したのは金物店など数軒にとどまる。特別委員会で東電福島復興本社の大倉誠代表は「(地元の業者からの物品の)購買について、(大手企業との)ある程度の価格差であれば考えたい」と地元業者の参入促進に努める考えを示した。

 任期満了に伴い12日に告示される町議選に出馬せず、今期限りで引退する意向の早川さんは「今後は商工会の一員として、廃炉に伴う町の経済活性化に尽力したい」と前を向いた。