「ADR」決裂...集団訴訟に発展 東京電力と住民側に意識のずれ

 

 原発事故を巡る賠償制度では、国の機関が住民と東電の間の和解を仲介する裁判外紛争解決手続き(ADR)がある。本来は、裁判よりも簡易で迅速な手続きで賠償実現を進めるための制度だが、交渉が決裂し、住民による集団訴訟に発展する事例も出てきている。

 浪江町の住民と東電の間のADRでは5年にわたり和解交渉が行われたが、最終的に東電が「住民に1人当たり月額10万円の精神的慰謝料に5万円増額、75歳以上の高齢者にさらに3万円を上乗せすることが望ましい」とする国の原子力損害賠償紛争解決センターが出した和解案を拒否。住民らは解決を求め福島地裁に提訴し、今も争われている。

 東電側は、一律の賠償増額ではなく「個別事情に応じて真摯(しんし)に対応していく」としており住民側との意識のずれが生じている。