『ふるさと喪失』...慰謝料どう判断 認定傾向、東京電力側は反論

 

 集団訴訟では、各訴訟によって表現は異なるが、原発事故によって心のよりどころとなる古里を奪われた―という住民の訴え、いわゆる「ふるさと喪失」に対する慰謝料をどのように判断するかという点も争われている。

 原告側は、国の賠償指針が定める慰謝料は、避難に伴う苦痛への賠償にとどまり不十分だと主張。原発事故で当たり前の日常生活や古里が奪われた損害は、独立した賠償として認めるべきだとして賠償の上積みなどを求めている。

 東電側は、原告の損害は賠償指針に基づいて支払い済みであり、避難指示が解除された地域は復興しており「ふるさと喪失」はないと反論している。

 「ふるさと喪失」を巡っては、原発事故に特有な損害として認める傾向が出てきている。千葉(第1陣)と横浜の各地裁は独立した慰謝料として認定。地裁いわき支部は避難に伴う慰謝料に「ふるさと喪失」の分を上積みした。

 このような中、仙台高裁判決は事故の賠償について〈1〉避難を余儀なくされたこと〈2〉避難の継続〈3〉古里の喪失―の三つに明確に分けて判断した。東京高裁判決も「ふるさと喪失」を個別に算定した。

 賠償問題を検証する大阪市立大の除本(よけもと)理史(まさふみ)教授(48)=環境政策論=は、賠償指針などにとらわれずに、司法が独自に「ふるさと喪失」の慰謝料を認める姿勢が共通してみられることを評価する。

 その上で「賠償認容額も大事だが、事故原因の究明は被害者が強く望むものであり、裁判でそれらが明らかにされれば『金目』ではない被害者救済の意味がある」と集団訴訟の意義を指摘する。