「集団訴訟」争点!大津波予見と対策 審理続く...原発事故の責任

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年目となる中、全国では国や東電に対して、約30の民事裁判の集団訴訟が起こされ、原告数は1万2000人を超えている。3月には仙台と東京の2高裁で東電の責任と慰謝料の上積みを認める司法判断が出された。大きな被害を受けた原発事故の責任は誰が、どのように取るのか。裁判所で審理が続いている。

 集団訴訟では、東電や国がさまざまなデータを基に大津波を予見し、あらかじめ十分な対策を講じていれば悲惨な原発事故を防ぐことができたのではないか―ということが主要な争点になっている。

 原告側は、2002(平成14)年に政府が公表した地震予測「長期評価」に基づけば、国や東電は大津波を予見することができ、津波対策を取る責任があったと訴える。一方、国や東電は当時の知見を踏まえ対策を講じたとしても、事故は防げなかったと主張。また、長期評価は信頼性に乏しいとの考え方を示し、津波を予見、回避することはできなかったと反論している。

 地裁判決では、東電は津波の予見が可能だったとし、津波対策を取らなかった過失を認め賠償を命じている。3月の仙台高裁判決も、長期評価に基づき、東電は遅くとも08年4月ごろには津波到来の可能性を認識していたが「対策工事の計画を先送りにしていた」と認定。東電の対応の不十分さは「痛恨の極み」だったと指摘した。

 国の責任を巡っては、地裁での判断は分かれている。国の責任を問うた訴訟の11件中、国の責任を認めたのは7件、認めなかったのは4件となっている。訴訟関係者は「今後の高裁判決がどのように判断するかが注目される」と指摘する。