『請戸ブランド』再興への一歩 かつての活気を...水産加工団地

 
「請戸で事業再開できて良かった。市場関係者の期待に応えていきたい」と話す柴社長=浪江町請戸

 【双葉郡】東京電力福島第1原発事故で避難指示が出された双葉郡の津波被災地では、かつての活気を取り戻すための取り組みが始まっている。

 浪江町の請戸地区では、漁港を中心として漁業復興が一歩一歩進む。町が整備した水産加工団地で、4月に事業を再開したのは、全町避難により休業していた地元の柴栄水産だ。「地元で水揚げした魚を取り扱えるのは本当にうれしいな」と、柴孝一社長(82)の弾むような声が、真新しい施設に響く。

 震災前はコウナゴなどの加工品製造のほか、ヒラメやスズキなどの鮮魚を築地や横浜、千葉など首都圏の市場に卸し、質の高さが市場関係者に評価されていた。しかし、津波で加工施設が流失、柴さん自身も原発事故により県内外に避難せざるを得なかった。「再開はできないかもしれない」との思いが心をよぎった。

 ただ、浪江町や地元漁業者から「何とか戻ってきてほしい」との声が寄せられた。「町の復興のためになりたい」と決意を固め、事業を再開した。

 取り扱う水産物の量は震災前に比べてまだ少ないが「請戸ブランドの再興に向け、これからも磨きをかけるよ」と、笑顔を見せた。

 広野町では防災林や土地のかさ上げを経て、ホテルやオフィスビル、集合住宅などが新設された。楢葉町では、震災後の主力作物に位置付けるサツマイモの貯蔵施設の整備が進んでいる。

 富岡町では、JR富岡駅周辺で複合施設の整備が計画されている。双葉町では中野地区に産業団地が整備され、一部の企業がすでに事業を開始している。