「宅地造成」838区画...380区画が空き地 いわき・沿岸部整備

 

 【いわき】震災による津波で甚大な被害を受けたいわき市沿岸部。被災地では土地区画整理事業が進められ、計838区画の宅地が造成された。家を失った住民の新たな生活の場として整備された宅地だったが、今年6月末時点で380区画が未利用の「空き地」となっている。

 「雇用の場がなくなったり、不便になってしまったりしたことが影響したと思う」。砂利が敷かれた空き地が広がる豊間地区の一角で、区長の遠藤守俊さん(76)はつぶやいた。

 震災前の豊間地区には、民宿が10軒、かまぼこ工場が7軒あった。しかし、数件を残し、津波で失われた。スーパーや医療機関なども近くにはなく、流された郵便局も現在はなくなったままだ。

 住民からは生活の不便さが、土地の利用促進につながらない―とする指摘がある。遠藤さんも「住民がいないので出店がない。出店もされないので定住者も伸びない。卵が先か鶏が先かのような話だ」と悩む。

 市によると、区画整理が行われた五つの地区では、18年6月までに造成した全ての宅地の引き渡しを完了した。それぞれの地区では、住民の意向やまちづくりの方向性を踏まえて土地の造成が行われた。ただ、震災から時間が経過するとともに、住民の帰還意識に変化が生じてきた。

 津波で被災した後、生活の拠点を地区外に移しそのまま根付いてしまったケースもあれば、高齢であることを理由に資金面から住宅再建を断念せざるを得なかった事例もあるという。担当者は「子や孫に土地を譲ろうとしたが、見通しが立たないと聞いたこともある」と語る。

 ただ、市もただ手をこまねいているわけではない。未利用地の解消に向け、土地の所有者と購入や賃借を希望する人を結ぶ「空き地バンク事業」を開始し、6月末現在で5件が成約した。担当者は「土地活用を促進し地域コミュニティーの維持、再生につなげたい」と今後も事業の周知を図っていく考えだ。