長崎大教授・高村昇館長に聞く 震災と原発事故...振り返る場に

 
「震災や原発事故についてより知るきっかけにしてほしい」と話す高村館長

 東日本大震災・原子力災害伝承館の高村昇館長は福島民友新聞社の取材に「震災と原発事故を振り返る場にしたい」と施設の意義を強調した。

 ―開館に当たり抱負を。
 「震災、原発事故から10年を迎えようとしている中で開館を迎える。福島が復興してきたこの9年半は震災と原発事故の発生、混乱、住民の避難、収束、除染、帰還、復興と世界の誰もが取り組んだことがないことばかりだった。伝承館がこれらのことを振り返る場になるよう努めていく」

 ―年間5万人の幅広い年代の来館を見込んでいる。どのような学びの場にしていくのか。
 「小学6年生は震災、原発事故当時のことを覚えていない。震災、原発事故以降に生まれた世代がこれから増えていく。展示資料や映像を見ながら自分の親の世代、そして福島がどのように復興してきたかを学べるようにしたい」

 ―資料を展示するだけでなく、語り部の講話を取り入れた理由は。
 「展示されている資料が震災、原発事故のすべてではない。震災、原発事故についてより知るきっかけにしてほしい。語り部の講話には風化防止という大きなテーマがある。震災の真っただ中で過ごしてきた人たちの講話を聞くことは風化に対する答えでもある」

 ―原発事故を見れば市町村によって復興の段階に差が出ている。復興をどのように見ているか。
 「第1原発の廃炉にはまだまだ時間がかかるし、いまだ数万人が避難生活を余儀なくされているという事実もある。10年で震災、原発事故からの復興が終わりということはない。ここからさらに震災、原発事故や復興について考えていかなくてはいけない」

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 たかむら・のぼる 長崎市出身。長崎大大学院医学研究科博士課程修了。長崎大原爆後障害医療研究所国際保健医療福祉学研究分野教授。県放射線健康リスク管理アドバイザーを務める。52歳。