若い世代が考える契機に 伝承館・高村館長、記憶...風化させず

 
「碑は記憶を風化させず次世代につなぐ役割がある」と話す高村館長=双葉町

 東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)の高村昇館長(52)は被災地で建立された碑について「記憶を風化させず、次世代につなぐ重要な役割を果たす」と説明する。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から9年9カ月が経過し、「震災を知らない世代」も育ちつつある。「碑が残れば、若い世代が災害を考えるきっかけとなる」と強調する。

 高村館長は長崎市出身で、原爆の脅威と平和の尊さを表した「平和祈念像」をはじめ原爆に関する碑や像が多く残る環境で育った。「直接経験していなくとも、碑や像を通じて『原爆を忘れない、二度と戦争してはいけない』という意識を養ってきた」と振り返る。

 自身の経験を踏まえ「直接体験した人がいなくなっても、碑は地域に残り続ける」と指摘。「沿岸部の古い石碑に、津波への注意が書き残されていた例が話題になった。碑を残すことは、未来の住民への警鐘にもなる」と考察する。

 伝承館には、修学旅行の児童生徒をはじめ県内外から多くの人が訪れる。「伝承館にも記憶や経験を未来に継承する役割がある。震災と原発事故の記憶を世界に発信し続ける『碑』のような施設でありたい」と力を込めた。