先人達の『心の声』...感じて 浪江・南棚塩、慰霊碑や史碑建立

 
南棚塩地区の歴史が刻まれた史碑=浪江町

 「南棚塩はもう人が住めない災害危険区域。碑は、にぎやかだった私たちの暮らしを子孫に伝えてくれる」。震災の津波で甚大な被害を受けた浪江町南棚塩地区で、2018(平成30)年秋に建てられた慰霊碑と史碑の碑文編さんを担当した木幡輝秋さん(86)=浪江町出身、福島市に避難=は語った。

 慰霊碑と史碑は、木幡さんら南棚塩地区の住民で組織する団体「大字棚塩区」が建立した。慰霊碑には高さ約15メートルの大津波によって亡くなった南棚塩の11人、行方不明のままとなっている2人の計13人の名前が刻まれている。

 並んで立つ史碑は、中世から現代までの地区の歴史を伝える。近現代に入り戸数が増え、浪江・小高原発の誘致を巡り地区が南北に分離した経過などが記されている。

 南棚塩地区は、全域が住居を新築できない災害危険区域に指定され、住民は各地で新しい生活を始めている。木幡さんは史碑の後半で「棚塩ゆかりの人々が潮騒と松風の聞こえるこの碑の前に立つ時、豊穣(ほうじょう)の大地を慈しんだ棚塩の先人達の心の声を感じて」と書き残した。数百年後の子どもたちに、先人が歩んだ歴史を伝えようとしている。