【中間貯蔵ルポ】見えぬ県外最終処分 低い認知度、高いハードル

 
各地から運ばれた除染土壌が集められ、大型土のう袋に詰まった除染土壌から草木や石を取り除く受け入れ・分別施設=2月24日

 東京電力福島第1原発事故に伴う県内の除染で出た土壌などを保管する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)が報道公開され、現地に入った。2015(平成27)年に始まった搬入は帰還困難区域などを除き新年度中に完了する見込みで、搬入作業は大詰めを迎える。一方、施設の設置年限である45年3月までの県外最終処分を巡る県内外の認知度は低く、今後の見通しは不透明だ。

 今回公開されたのは大熊町側にある、運ばれてきた土壌の「受け入れ・分別施設」と実際に土壌を貯蔵する「土壌貯蔵施設」。今年2月11日時点の累計搬入量は東京ドーム約8.5個分相当の約1045万立方メートルに上る。

 敷地の片隅に、手付かずの民家が残っているのが目に入った。窓際に色あせた縫いぐるみが置いてあり、かつてここには日常生活があったということを思い起こさせる。土壌貯蔵施設は、丘の上からカメラを構えても全体が収まらないくらい広い。同様の貯蔵施設が敷地内に8カ所あるというが、2時間程度の滞在ではとても全体像がつかめない広さで、失われた古里の広大さを改めて思い知った。

 政府は除染で出た土壌などを一時的に中間貯蔵施設で保管後、45年までに県外で最終処分することを法律で定めているが、このことを知っている人は県外では少ない。環境省福島地方環境事務所の庄子真憲次長は「まずは本県に中間貯蔵施設があり、県外最終処分を行うことを知ってもらい、最終処分につなげたい」と話す。

 国内各地で毎年のように地震や水害が発生し、震災と原発事故は人々の記憶から遠くなる。しかし除染で出た土壌の最終処分はこれからが本題に入る問題だ。環境省は新年度、東京など全国各地で県外最終処分に向けた理解を広げる集会を開く。迷惑施設建設の話は、間違いなく難航するだろうが、多くの人にわが事として考えてもらうきっかけにしてほしい。