【授業ルポ】切り開くふたばの未来 バナナで脱プラなど実現模索

 

 「環境ビジネスで地域を活気づけたい」「消えていく街並みを仮想空間で再現できないか」。広野町の高台にある洗練されたデザインの校舎では、あちこちで古里の再生に向けたアイデアが飛び交っていた。

 毎週水曜の5~6校時になると、高校2、3年生が自ら見つけた地域課題の解決策に考えを巡らせる。ふたば未来学園高が、中学併設型の新校舎に移る前の2015(平成27)年に開校して以来、力を入れる「未来創造探究」の授業だ。

 「広野産バナナの茎や葉を使って紙を作って普及したい」。ある教室では、モニターに向かって身ぶり手ぶりを交えながら実現したいアイデアを熱心に説明する女子生徒の姿があった。2年の木田莞奈さん(17)と草野真綸さん(17)の2人は、環境に配慮したビジネス創出をテーマに、町が新たな特産品として栽培しているバナナに着目する。廃棄される茎や葉を活用して紙を作り、ストローなどに加工することで脱プラスチックへの関心を高めることができないかと、青写真を描く。

 「バナナを使ったというアピールポイントだけでは普及しない。付加価値を高める方法を考えてほしい」。モニターに映る国立環境研究所の研究者は2人と真剣に向き合い、時に厳しい助言を送った。

 「地元の企業の協力を得て紙作りを進める段階に入ったが、どうすれば売れるのかという視点が欠けていた。販売戦略を考えたい」と木田さんは話す。計画実現に向けた2人の模索はこれからも続きそうだ。

 未来創造探究では現在、2年生だけでも震災の記憶の継承や農業、防災などをテーマに60を超えるプロジェクトに挑んでいるという。体育館に足を運ぶと、別のグループがドローンの操作方法を学んでいた。研修で双葉郡内を巡った際、建物の解体が進む現状を目の当たりにし、古里の風景がなくなる前に仮想空間でその街並みを再現したいのだという。2年の渡辺快さん(17)は「ドローンで双葉郡を空撮し、街並みを詳しく把握したい。震災を経験していない世代にも被災地に関心を持ってもらえるようプロジェクトを成功させたい」と意気込む。

 開校から6年を迎えた未来創造探究の取り組みについて、担当職員は「住民や企業との連携が年々深まり、地域一丸で課題の解決に向けて挑む態勢が整った」と手応えを語る。例えば、19年に生徒と地元企業が楢葉町名産の木戸川のサケを使って共同開発した「鮭フレーク」は今も売れ行き好調で、食の安全の発信に貢献しているという。

 震災から10年。被災地の住民が向き合う課題は多様化している。教育復興の柱と期待されて開校したふたば未来学園高。そこでは若い世代の情熱と柔軟で新しい発想が、被災地の未来を切り開く力に育ちつつある。