旧東電経営陣を強制起訴 長期評価の信用性否定、3人に無罪判決

 

 東京電力福島第1原発事故は防げたのか、そして責任は誰にあるのか。検察が不起訴とした勝俣恒久元会長(80)ら旧東電経営陣3人について、市民で構成する検察審査会は2016(平成28)年2月、業務上過失致死傷罪で起訴すべきとの2度目の議決を行った。これにより3人は強制起訴され、責任追及は刑事裁判の場で行われることになった。

 強制起訴されたのは勝俣氏のほか、武黒一郎(74)、武藤栄(70)の両元副社長。原発の安全対策を怠り、震災の津波で原発事故を招いた結果、避難を強いられた双葉病院(大熊町)の入院患者ら44人を死亡させるなどした、という内容だ。

 17年6月に始まり37回にわたった公判では主に、旧経営陣が原発事故を起こす要因となった津波の発生を予見できたかどうかが争われた。検察官役の指定弁護士は、事故前に「最大15メートル超」の津波の可能性を指摘した試算を根拠に「対策を取るか、運転を停止していれば事故は防げた」と主張、3人に禁錮5年を求刑した。

 19年9月の東京地裁判決は、大津波の試算の根拠となった政府機関の地震に関する「長期評価」の信用性を否定。その上で、津波発生の予見可能性も否定し、3人に無罪判決を言い渡した。指定弁護士は控訴し、今後は東京高裁で審理が行われる見通しだ。