「国の責任」分かれた判断 集団訴訟、原告数1万2000人超える

 

 原発事故は、長期の住民避難など甚大な被害をもたらした。強制起訴された東京電力旧経営陣の刑事裁判とともに県内外で東電や国に損害賠償を求める集団訴訟も相次いで起こされた。約30ある民事裁判の原告数は1万2000人を超える。

 集団訴訟のうち、これまでに6件で言い渡された高裁判決はいずれも東電の責任を認定し、原告に国の賠償指針を超える賠償上積みを認めた。ただ、東電とともに国も被告となった三つの訴訟では、国の責任について高裁の判断が分かれた。

 東電と国が被告となったいずれの訴訟でも争われたのが、国が大津波を予見して十分な対策を講じていれば事故を回避できたのかどうかという点だ。そしてその大津波の予見可能性という点で、2002(平成14)年に政府が公表し、大津波の可能性を指摘した地震予測「長期評価」の信頼性をどう評価するのかが、高裁の判断を左右してきた。

 二審で初めて国の責任を認定した仙台高裁は長期評価の信頼性を認定し「(国は)東電の報告を唯々諾々と受け入れ、規制する役割を果たさなかった」と津波対策の不備を放置した国の姿勢を批判。2月の東京高裁も「相応の科学的信頼性がある」と認め、信頼性は土木学会の知見と「同等」と評価した。一方で、1月の東京高裁では「当時の土木学会の知見と整合しない」として長期評価の信頼性を否定し、国の裁量を重視した。

 原告側として国の責任を問うた3高裁判決に関わった馬奈木厳太郎弁護士(生業(なりわい)訴訟弁護団事務局長)は「賠償の司法の流れは固まってきたが、国の責任は(高裁判決では)2勝1敗の状況。高裁や地裁判決が続く中、最高裁の判断が大きな焦点となる」と説明する。高裁判決のあった集団訴訟全てで、原告や東電、国が最高裁に上告した。最高裁がいかなる判断を示すのか。今後、注目される。