「復興」前面に、世界へ発信 注目集まる東京五輪の機会生かし

 
五輪会場決定翌年には日本と米国のソフトボール国際親善試合が開催され、白熱した試合が繰り広げられた=2018年6月23日

 2017(平成29)年3月、東京五輪の野球・ソフトボールの一部試合があづま球場(福島市)で行われることが正式に決定した。大会組織委員会は世界の注目が集まる五輪の機会を生かし「復興五輪」を前面に打ち出した。被災地が復興を成し遂げつつある姿を世界に発信できるよう準備が始まった。

 あづま球場のほか、郡山、いわき2市の球場も会場候補に挙がったが、交通アクセスや受け入れ態勢などから、あづま球場に決まった。東京電力福島第1原発事故で「福島」の名前が世界に知られ、「福島市で開催することに意味がある」と訴える組織委の関係者もいた。ソフトボールは開会式に先立ち、全競技のトップを切って予選6試合、野球は予選1試合が行われる。いずれも日本戦を想定している。

 建設から30年経過し老朽が目立っていた球場は、同じく野球会場に決まった横浜スタジアム(横浜市)を参考に、コスト面と五輪後の施設の有効活用の在り方を照らし合わせながら改修工事が進められた。障害者や高齢者の利便性向上のため、球場メイン入り口脇にエレベーター1基を設置。天然芝と土のグラウンドを人工芝化し、老朽化したトイレ、シャワー室などを改修した。改修工事は19年9月末に完了した。

 白熱の親善試合

 会場決定翌年の18年には、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が安倍晋三首相(当時)らと球場を視察し、地元の子どもたちと懇談した。女子ソフトボールの国際親善試合も開催され、世界ランキング1位の米国と2位の日本が対戦。五輪本番を思わせる白熱した試合が繰り広げられた。