【施設ルポ】進化するロボテス 気軽に実験、先端技術開発が進む

 
イノベーション・コースト構想の一環として県が整備した福島ロボットテストフィールド。災害現場など実際の環境を再現した一大拠点で、ロボットの性能評価などが進められている=今年2月

 浜通りに新産業を集積する福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想に基づき、県が整備したロボットの研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)。間もなく全面開所から1年となるが、どんな魅力や課題があるのか。足を運んだ。

 東京ドーム10個分超となる約50ヘクタールの広大な敷地。研究施設のほか、訓練用の市街地フィールド、トンネルなどが並び、遠くから見ると一つの街のようにも見える。「カタカタカタ...」。施設を訪ねると、黙々と草を刈る小型ロボットのお出迎えを受け、先端技術の開発が進められていることを実感させた。

 「施設の使い方は自由。特に活動の制限は掛けていない。とにかくたくさん使ってもらうのが目的」。施設を案内してくれた事業企画課の金成啓太さん(29)は施設の魅力をこう語る。

 気軽に実験ができるよう、施設の利用料金は県外の他の施設などと比べて割安だ。収益よりも、企業の成長や新産業の創出を後押しする狙いがある。研究棟には20の法人・企業が入居しているが、入居していない企業も施設の利用が可能。施設によると、2017(平成29)年9月から1月末までにロボットの実証実験は296回行われた。

 整う最適の環境

 「ここに来れば、私たちが求めていることのほとんどができる」。荷物運搬など産業用ドローンの開発を進めるプロドローン(名古屋市)の曽田篤洋さん(54)は企業側のメリットを語る。同社によると、騒音や建物立地の関係上、ドローンを飛ばすのに厳しい条件がある首都圏などに比べ、同施設には実験に最適な環境が整っているという。

 一方で、全面開所から間もなく1年となる中、見えてきた課題もある。施設では企業の実験が活発に行われているが、地元との交流に乏しく、連携がまだまだ深まっていないのが現状という。事業企画課長の石川仁さん(49)は「イベントなどを積極的に開催して地域になじみのある施設にしたい」と展望を語る。

 今後、本県からどんな「日本初、世界初」の技術が生まれていくのか。単なる実験施設ではなく、震災復興からの希望と本県を象徴する施設になることに期待したい。