避難解除から4年、街を動かす「若さ」 4町村、住みよい古里へ

 
開店初日の店内で接客に当たる無印良品の渡部店長(右)=浪江町・道の駅なみえ

 東京電力福島第1原発事故による浪江、富岡、川俣(山木屋)、飯舘の4町村で帰還困難区域を除く避難指示が解除されて4年が経過した。いまだ住民帰還が思うように進まないなどの課題は残るものの、若い世代が新たな息吹を吹き込もうとしている。住みよい古里づくりに向けたそれぞれの地域の動きを追った。

 生活をもっと豊かに 無印良品店長・渡部さん

 【浪江町】道の駅なみえで3月20日、相双地方で初となる生活雑貨の「無印良品」が開店した。町出身の店長渡部真希さん(35)は「町民の生活をもっと豊かにするような商品を届けたい」と話す。原発事故による全町避難を経て、荒涼とした風景が残る町に新たな彩りを加えようとしている。

 町は2017(平成29)年3月末、原発事故による避難指示が町中心部など一部地域で解除された。仮設の商業施設やイオン浪江店がオープンするなど、住民生活に必要な買い物の環境改善が進んできたが、住民からは「もっと買い物の幅がほしい」との声が上がっていた。

 町によると、2月末現在の居住者数は1596人で、震災前の1割未満。解除後の町は復興関連事業者の姿が多く見られる一方、昨夏に開所した道の駅を中心に、町内外から訪れる人の姿も増えてきた。特に無印良品の店内は、帰還した町民のほか、若い女性らでにぎわっている。

 店長の渡部さんも、道の駅のオープンに合わせて避難先から戻った一人。震災前にあったスーパーが閉店するなど、かつての古里の風景は変わってしまったが「未来に向かって新しく進んでいこう」と心に決めた。「震災から10年が過ぎた。みんな頑張って生きてきた。自分の苦しみを少しずつ解放して、今度は幸せを求めて生きてほしい」。渡部さんはそう願い、笑顔で店頭に立つ。

 世代間の交流「活力」 地域おこし隊・大槻さん

 【飯舘村】地域おこし協力隊でキャンドル作家の大槻美友さん(27)=福島市出身=は、創作活動の拠点となるアトリエの整備に向けて古民家の改修作業に連日汗を流す。大槻さんは「原発事故から連想される村の負のイメージは払拭(ふっしょく)しきれていないかもしれない。けれども、私と同じような若い世代の移住者が増えるなど、明るい話題もたくさん聞くようになった」と話す。

 帰還困難区域となっている長泥地区を除いて避難指示が解除された後も、村内に戻った人口は震災前の人口の3割に満たない。

 そんな中、昨夏には子育て世代の定住促進を目指す多目的交流施設「ふかや風の子広場」が整備された。

 同施設で昨年10月にキャンドル作りを体験するワークショップを開いた大槻さん。「村内外から多くの親子連れが立ち寄ってくれた。(施設の整備など)若い世代にとっては明るい兆し。若者に加え幅広い世代の村民の交流が、今後の村を支える活力や知見を生み出し、村の復興につながると確信している」と思いを語った。

 アンスリウム農園、移住定住つなげる 栽培農家・谷口さん

 【川俣町】震災後に栽培が始まったアンスリウム。山木屋地区に現在、アンスリウムの観光農園を整備している栽培農家の谷口豪樹さん(33)=福島市=は「地区のにぎわい創出や移住定住の促進、雇用の創出など山木屋の活性化につながる観光農園にしていきたい」と力を込める。

 町によると、震災前に地区の人口は1252人いたが、現在の居住者は341人と帰還の足取りは鈍い。居住者のうち、65歳以上の高齢者が6割弱を占める。

 「10年、20年先を見据えたとき、山木屋地区に人が集うようになって初めて真の復興と言えるのではないか」と谷口さん。観光農園ではカフェの併設やワークショップの開催なども予定しており、世代のニーズに合わせた施設に育てていく計画だ。

 地区内には、復興拠点商業施設「とんやの郷」が避難指示解除後に誕生した。谷口さんは「観光農園も含め、点から面へと各施設の連携を広げて地区の魅力発信につなげていくことが大切だ」と展望を語る。

 「子どもの姿」地域明るく 地域交流館

 【富岡町】ボールプールやバドミントンなど多彩な遊具で遊ぶ子どもたちの歓声が響く。町が中心部に整備した屋内遊び場「町地域交流館」は、親子連れでにぎわう新たな交流の拠点となっている。

 帰還困難区域を除く避難指示の解除から4年。町内で暮らす小中学生は45人で、震災前の約1500人の約3%にとどまる。町は地域交流館を子育て支援の拠点と位置付け、若い世代の帰還促進や移住者を呼び込むための魅力の柱にしたい考えだ。

 同館は3月28日に開館した。施設を運営する町さくら文化・スポーツ振興公社によると、春休み期間中は1日平均で約100人の利用があった。町外から訪れる利用者も多く、交流人口の拡大につながる可能性も見えてきた。

 同公社の武内雅人さん(40)は「大勢の子どもが遊ぶ姿は町を明るくする。保護者にとっても子育ての悩みを相談し合う場として息抜きになる。若い世代でにぎわう町の姿を取り戻すための力にしたい」と話した。