広範囲に皆伐、産地の足掛かり 里山・広葉樹林再生プロジェクト

 

 本年度からスタートする「里山・広葉樹林再生プロジェクト」。2011年に約3万立方メートルあった原木の生産量は、阿武隈高地の主要産地の出荷停止によって約1300立方メートルまで落ち込んでいる。

 現在は南会津などの地域で原木生産が続けられているが、原木生産活動による森林の伐採、更新面積は原発事故前の年間500ヘクタールから大きく減少し、年間20ヘクタールにとどまっている。

 推定で5700ヘクタールとされる阿武隈高地のシイタケ原木林でも原発事故後、「ふくしま森林再生事業」を使った伐採が行われてきた。しかし、この枠組みは木を間引く間伐が主で、広葉樹林の更新に適した広範囲の伐採の「皆伐」ができなかった。プロジェクトの始動により、今後は「広葉樹林再生事業」というメニューが使えるようになり、皆伐による産地再生に着手することが可能になった。

 広葉樹の伐採時期は、9月から翌年の3月までに限られる。このため、国や県は、現地の生産団体などと連携して可能な限り計画的な伐採を進めていく構えだ。切り出した木は当面、燃料用チップなどとして活用する。さらに、科学的なデータを蓄積した生産のガイドラインを作成する予定になっている。

 ただ、シイタケの菌を作るメーカーは、原木に合わせて菌を作る傾向にある。このため将来、本県産の原木が指標値をクリアして安全を確保することができても、他県産に奪われてしまった市場シェアを取り戻すためには、さまざまな働き掛けや工夫が必要になる。また、良質な原木づくりのノウハウを継承していくことも課題になりそうだ。

 県森林整備課の担当者は「産業としての再生を最終目標としている。それに加え、適正な管理を通じて里山の荒廃を防ぎ、防災面などでの森林の『公益的機能』を維持していくことも重要だ。一歩一歩進めていきたい」と語る。

 今回のプロジェクトは、第2期復興・創生期間(21~25年度)の復興を定めた国の基本方針に位置付けられた取り組みだ。まきや炭からガス、電気へと移り変わったエネルギー革命の中で翻弄(ほんろう)された、本県の中山間地の再生を図るため、着実な効果を上げていくことが求められている。