気持ちに寄り添える場に いわき・原子力災害考証館 furusato

 
原子力災害考証館で「原発事故被害に遭った人の思いを伝えていきたい」と話す里見さん=いわき市・古滝屋

 いわき市のいわき湯本温泉古滝屋に3月、「原子力災害考証館 furusato」が開館した。「住民目線で災害に遭った個々の思いを伝える場が必要だと感じた」。社長の里見喜生さん(52)は、資料を手に開館に至る経緯を語り始めた。

 古里を変えた原発事故をどのように伝えていくべきなのか―。そのような思いを抱えていた里見さんは2014(平成26)年、公害に苦しんだ熊本県水俣市を訪れた。そこでは、公設と民間の伝承施設がそれぞれの視点で「水俣病」を伝え、被害の全体像を補完するような関係になっていた。

 当時、県内をみると、事故の状況やデータを伝える施設はあったが、被災地の伝統や暮らしを伝える場は見当たらなかった。「両輪あるから、事実に近づくことができる」。目指す施設のイメージが固まった。

 被災者から譲り受けた品など、震災当時の空気感が伝わるような資料を集めた。展示物の一つは、津波被害に遭いながら原発事故の影響で捜索できず、亡くなった子どもの遺品ががれきに埋もれた様子を再現している。これまでに、全国から約550人が施設を訪れた。

 里見さんは「人の思い、暮らしが一瞬でなくなった。その気持ちに寄り添える場としたい」と決意を語った。問い合わせは古滝屋(電話0246・43・2191)へ。