仮設住宅、福島県内に1万6800戸 コミュニティーづくり苦心

 

 震災と原発事故に伴う県内の仮設住宅、最大で1万4590戸に3万1520人が入居した(2013年4月時点)。現在は郡山市にある双葉町民向けの仮設住宅3戸が利用されているが、多くの地点で解体が完了している。

 仮設住宅というと、プレハブ形式が想像されるが本県では約5割が木造だった。県によると、災害協定を締結していたプレハブ建築協会に加え、供給の迅速化を図るため地元業者に建設を公募したことが木造仮設の増えた理由という。

 正確な統計はないが、県は過去の大規模な災害をみても、最も多く木造仮設が利用されたのではないかと分析する。プレハブに比べて被災者の入居希望も多かったとされ、本県の仮設建設の特徴となっている。

 建設時には、集会所の設置など仮設内でコミュニティーをつくることができるよう配慮した。県は当初、住民が顔を合わせる機会を増やそうと、玄関が向かい合わせになる住宅配置を提案した。しかし被災自治体から「せっかく避難所から仮設に入居したのだから、他人に見えないような配慮が必要」「入り口の向きにより日当たりの格差が出てしまう」との指摘があり、導入は進まなかった。

 一方、窓を一般住宅のように足元まである「掃き出し窓」にし、縁側を設置する対策は好評だった。縁側は住民が集い、話し合う場になった。ただ、当時は標準的な仮設住宅の建設仕様として認められていなかったため、全体の5割弱での実施にとどまった。

 福島県発の要望標準化 追いだき、畳敷き、縁側 

 本県の仮設住宅を巡っては、原発事故による避難の長期化も影響し、生活環境を改善するためさまざまな追加工事が行われた。追いだき機能付き給湯器への交換や洋室の床に畳を敷くことなど、住民のニーズに応えるため政府と協議しながら一つ一つ実現した。

 県は2011年9月、これらの教訓を「福島からの提言」としてまとめようと研究会を設置した。議論を重ね、13年2月に「これからの応急仮設住宅等の供給に関する要望等」として、政府に関係制度の改善などを訴えた。緊急時に迅速に対応できるよう都道府県の裁量を強めることや過去の災害で行われた対策の一般基準化―などが主な内容となった。

 その後、16年の熊本地震の際に建てられた仮設住宅では、追いだき機能付き給湯器や畳敷き、縁側の設置が標準的な対応として導入された。県建築住宅課は「私たちの経験が役立てられたと思う」としている。