「拠点外」変化の兆し 避難指示解除方針、住民の意向反映焦点

 

 東日本大震災10年の節目から半年、東京電力福島第1原発事故の被災地を巡る復興政策に新たな動きがあった。政府は今も立ち入りが制限されている帰還困難区域のうち、帰還のめどが付いていなかった地域について、2020年代のうちに希望する全ての人が古里に戻れるよう避難指示を解除する方針を打ち出した。

 帰還困難区域を巡っては双葉、大熊、浪江、富岡、葛尾、飯舘の6町村が、それぞれの区域内に先行して居住再開を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)を設定している。区域全体からすれば限られた面積だが、22~23年春の避難指示解除に向け国費で除染や家屋解体、インフラ整備が進められている。

 一方、復興拠点から外れた地域については今後どのように取り扱うのか方向性が決まっていなかった。このため、飯舘村を除く関係町村でつくる協議会は、政府と与党に対し6月中に方針を示すよう要望した。与党は7月、将来的な避難指示解除を目指す提言を政府に提出していた。

 政府がようやく方針を決定したのは8月31日だった。復興拠点から外れている地域については、住民の帰還意向を複数回かけて個別に確認し、必要な箇所の除染やインフラ整備に国費で取り組むことにした。除染は復興拠点の避難指示解除後、速やかに始める。

 ただ、除染する範囲や手法をどのように設定するかは、地元との協議に委ねられた。住民が帰還意向を示さなかった土地や建物の扱いは、今後の検討課題とした。関係町村は区域全域の除染を求めており、政府が被災地の意向にどこまで沿うかが焦点だ。

 帰還が鈍化、移住に転換

 すでに避難指示が解除された地域での政策にも変化が生まれた。政府は、時間が経過するにつれて住民帰還の動きが鈍くなっている地域があることを踏まえ、「帰還」に加えて「移住・定住」の促進にも力を入れる方向にかじを切った。

 福島再生加速化交付金に移住・定住支援のメニューを新たに設けるなど、自治体独自の取り組みを後押しする。県も7月、富岡町に「ふくしま12市町村移住支援センター」を開設し、市町村を支援する枠組みを整えた。

 ただ、地方への移住・定住支援活動に取り組んできた関係者からは「移住の呼び水として、ほかの地域より高いお金を配るだけのやり方では通用しない。その地域ならではの魅力をどのように高められるかにかかっている」との声が上がる。

 人口減少は全国的に進んでおり、新住民の確保に関わる「地域間競争」は、被災地にとっても無縁ではない。

 復興の進度が異なる市町村がそれぞれ知恵を絞り、どのようにして地域再生を進めていくか。また、政府と広域自治体の県が、市町村をどのように支えるか。本年度から始まった「第2期復興・創生期間」の真価が問われる。